表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アフレクションネクロマンサー 序章  作者: 歩道 進
世界
1375/1400

プロローグ2

彼を見付けたのは、自分だった。



彼の血から特殊な遺伝子を見付け、その研究の為に彼を研究施設に連れて来たのだが、彼の貴重な血は、他の者達の目にもとまってしまった。



後ろ盾が特に無い自分は、出張という形で地上に飛ばされ、その間に彼は、命と体の限界まで実験を繰り返されていた。



私が無理矢理にでも、彼を連れて地上に行けばこんな事にならなかったのに、それをしなかったばかりに、彼は息も絶え絶えになってしまっている。



「それでさ…夢の中のネズミはこう嘆くんだ……「痛いよ…痛いよ……死にたくないよ……」って、可哀想だよな。その打たれた薬は、死ぬ事でしか苦しみから逃れられ無いのに、生きる事を望む。苦しみから逃れたいのに、死にたくないという想いが(かせ)となる……人の手によって与えられた業なのに、苦しむそのネズミは憐れだ」



「……あたしは、ろくな死に方は出来ないだろうな……覚悟はしている」



少年の言葉は、彼女が奪ってきた命の、全ての生物達の嘆きを聞かされているような気がして、辛くなるがそれでも気丈に振舞う。



そんな気丈に振舞う彼女に対して、彼は目をつぶって弱々しく息を吐いてから、



「あぁ…あぁ……死にたくない……死にたくない……逃げたい……逃げたいよ……」



夢の中で見たネズミの、苦しみの怨嗟を言葉にしていく。



「殺される…殺される……!!死ぬ死ぬ死ぬ!!!!!!」



彼の口にする怨嗟は、彼女の眉間にシワを寄せるには充分で、



「なぁ、お前には昔話したけど、アタシにはどんな事をしても復讐を果たしたい相手がいるって……そいつをぶっ殺したら、アタシの命なんて、その場でくれてやる」



「…………」



彼女が、命を掛けた誓約を口にした途端に、怨嗟の声を止めて、目を開いてバックミラー越しに視線を合わせて来る。



夢の中で見たというネズミの声を聞かせる事で、彼女に対して罪悪感と罪を償わせるという想いを……



「あなたでも、そんなセンチな事を言うんですね」



そんな想いは無いらしく、彼女のらしくない懺悔と誓約の言葉が面白かったのか、口元が楽しげにほころぶ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ