世界63
礼人が自分の為に作ってくれたペンダントも、特別な物だというのは分かるのだが、これはもっと違う何かで……
「あの子が、お前の為にペンダントを作ったように、これは、あの子の為に作られた物なのだろうな」
「礼人の為に作られた物?」
「継ぎ接ぎもしてあって、余程大切にしていたのだろうな」
手渡されたお守りには所々に破けた跡があるが、破けた所は別の布が張り付けられて丁寧に縫われてあり、礼人がとても大事にしていたのが良く分かる。
「おばあさん……」
精神世界で出会った老婆、礼人を想っていた人の顔が浮かぶ。
薄れていく魂で、礼人の事を最期まで護っていた老婆。
きっとあの人が、礼人を守りたいと想って用意し、それを礼人がずっと持ち続けていた。
この布袋は想いと想いが重なり合い、とても特別な物になっているというのは理解した。
「おじい様!!ここから離れましょう!!」
「よく聞きなさいリーフ」
布袋から感じるリーフに今一度力を与え、この赤いモノで満たされた場所から逃げ出す力を与えるが、
「立ち向かいなさい……」
「立ち向かう?」
ビレーは、リーフの肩を掴んで、その場に留まらせる。
「アフレクションネクロマンサーが、運命を狂わせるというのは良く分からん……だが、一つ分かっている事がある。それは、異世界から来て、他の世界を救う者だという事だ」
「他の世界を救う者……?」
「そうだ、あのお守りを持って感じた。この赤い柱の先に向こうの世界があると……そして、その赤い柱を辿って、向こうの世界に行こうとしているモノ達を」
そう言うとビレーは、赤い空を突き破る赤い柱を見上げる。
「リーフは、アフレクションネクロマンサーになったのだろ……アフレクションネクロマンサーは、異世界を救う為に力を貸してくれる英雄……行かないといけない、彼の世界救う為に」
「おじい様……」
ビレーの言う通り、この赤い柱の中に次々と登る赤いムカデがここだけとは限らない。
それこそ、ここ以外にも赤い柱があるかもしれないし、もしかしたら、異次元の狭間の中の赤い柱の部分からも、赤いムカデが生まれて這い上がっているかもしれない。




