世界61
悪霊を喰らう妖怪。
それを願い続けて姿か形が変われば、その姿にはなれるだろう……だが、それは赤いモノと混ざり合った姿。
最初は赤いモノを喰らっていても、いずれは、赤いモノを内包し切れずに、亡くなった者も、生きている者も喰らう者になってしまう。
「許さない!!!!許さない!!!!許さない!!!!許さない!!!!許さない!!!!許さない!!!!許さない!!!!」
怨念を吐き出す。
赤いモノに憑り殺されても、復讐心だけは残す為に。
赤ん坊の魔の手が伸びるのを、目を吊り上げて待つ。
触れられたら乗っ取られるのではなく、こちらが乗っ取る為に……
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおぉぉぉおぉおぉ!!!!!!!!!!!!!!リィィィィィィィイイィフゥウゥウゥゥウウゥゥゥゥウ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「………!!!!おじい様!!!!!!!!」
覚悟を決めて、人ならざるモノになろうとしていたリーフの下へ、赤い飛沫を上げながら、ビレーが全速力で突っ込んで来る。
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話は少し遡る。
リディがドラゴンと化して、レインの下へと飛んで行き、その場に残された者達。
「私は、リディ様の命を受けて撤退をするが、ワイバーン達を連れ戻す為に鉄騎兵を行かせる。それと同時にリーフも連れ戻す」
その中で指揮を頼まれたレンスは、リディを置いて行く判断を下して、撤退の準備を整える。
「ありがとうございます。しかし、リーフ様を確実に連れ戻したいので、我々も鉄騎兵と一緒に……」
「心遣い感謝する。ワシだけが向かうから、他の者を連れて先に撤退して欲しい」
「オヤジ!!何を言っているんだ!!」
リディの判断に不満が出るはずも無く、ベルガはレンスの提案に同意しようとしたのだが、ビレーが少しだけ内容を変える。
「よく聞けベルガ、あそこはもう、人ならざる場所だ。それこそアフレクションネクロマンサーだけが立ち入って良い場所。そんな危険な所にみんなを行かせられんよ」
「オヤジだって、アフレクションネクロマンサーじゃないだろ!!」
「それが、そうでもないんじゃよ」
「それは?」
「礼人の…アフレクションネクロマンサーの世界では、お守りと言うらしい」
そう言って、腰に付けていた小さな袋から取り出しのは「安全祈願」と書かれている、これまた小さな布袋であった。




