世界58
「そう、ただ粘度を調整するのは簡単です。硬いか柔いか…それだけなら」
『パッキン!!』
そう言って、霊力で出来た球体を力強く地面に叩き付けると、中の小さなコップが割れた。
(このまま叩き付けられたら死ぬ……!!!!)
あの時、礼人が教えてくれた事は、霊力の粘度を適切にし、衝撃を上手く拡散させなければ、地上に落ちた時に衝撃が、自分に来てしまうという事。
リーフは、翼を折り畳んで体の背中と側面を覆うようにする。
(練習はしたんだから大丈夫!!)
礼人が創ってくれた、霊力のクッションの上に何度も落ちて、霊力の翼で落ちる練習をした。
取り急ぎで練習したとはいえ、礼人から及第点を貰っている。
(大丈夫…大丈夫……)
初めての、練習ではない落下。
礼人が、命の保証をしてくれた落ちる練習と、命を奪う為の落下では、天と地ほどに違うが、
『ブッチャァァァァァァァァァンンン!!!!!!』
落ちるのは待ってくれない。
地上に落ちると、けたたましい音が鳴り、
「ぐ…ぐぅぅ……まさか、赤いモノに救われるなんて……」
リーフは、地上に落ちた。
「………………」
赤く染まるリーフ。
地上に横たわり、指先一本動か……
「…………体は…動く……」
指先一本を動かすと、手の指先、足の指先から一つ一つ丁寧に曲げる。
幸運にも、先に落ちたのは赤いムカデの胴体の方で、赤いムカデの胴体が地表にぶつかると弾けて赤い液体となり、それが地表に広がって、衝撃を和らげてくれていた。
「ぐちゅぐちゅする……」
足を踏ん張らせて、ふらつく体と頭を持ち上げると、自分の周囲に広がる赤い液体が目に入る。
「生肉みたい……」
礼人から教わった粘度の話を彷彿させる、粘度の高い赤い液体。
これが赤いモノ達を創り出す肉体かと思うと、気持ちが悪く……
『ふぎゃ……』
「えっ……」
『『『ふぎゃぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁっぁああぁぁぁ!!!!!!!!!!』』』
「ば…化け物!!!!」
赤い液体から泣き声が聞こえたと思った次の瞬間には、赤い液体から、細長い手足を持った赤ん坊が這い出てくるのであった。




