世界57
赤いモノに対して特効といえる霊力の鎧は、張り付いて来る赤いムカデを消滅させてくれるのだが、
『『『キィシャァァアァァァァァァァァ!!!!!!!!!!』』』
「くっ……!!」
赤い柱からはがれた大きな大きいムカデは、その身を分裂させて、人のサイズ程の赤いムカデとなって、リーフに降り注ぐ。
数の暴力。
リーフは赤いムカデを振り払うが、嵐のように降り注ぐ赤いムカデは、体に張り付く。
「この…この……」
霊力の発現を表す、白銀の翼の光が弱まっていく。
赤いムカデが、自分の体に張り付く時間が長くなるのと同時に、体を噛まれる感触を覚える。
「私は…私は……」
諦めたくないという気持ちと、ここまでという気持ちが入り混じる。
勝ちたいちという気持ちと、負けを受け入れるべきという気持ちが、リーフに意地という感情を与え、
『ギィィシャァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!』
「あっ……」
選択を選ばないという、最悪の行為をさせてしまう。
立ち向かう歩みを止め、立ち去る歩みを止め、葛藤する気持ちでその場に留まってしまったリーフに、分裂をしないで、大きな赤いムカデが落ちて来て、
『ぐぅ!!!?』
その巨大な口でリーフを捕らえて、地上へと落ちる。
大きなムカデは待っていた。
自分達を溶かす鎧を、身に纏っている者の力が弱くなるのを。
「うぁぁぁぁぁあぁあぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
赤いムカデに連れられて、地上へと落ちるリーフ。
自分に噛み付いている赤いムカデは、赤いモノであるから、今すぐに体を真っ二つにされる事は無いが、
「はなせぇぇえぇえぇぇえぇぇぇぇぇっぇぇ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
地面はそうではない。
それは礼人から、空を飛ぶ時に教わった事。
「霊力というと色々と説明しないといけないのですが、今回は、粘度のある液体だと思って下さい」
「粘度のある液体?」
礼人は、手の平にボールを作り、その中に小さなコップを入れると、ゴム毬のように弾ませる。
「そうです、粘度は硬さ。硬さを調整すれば、この様に中のコップを割らずに弾ませる事が出来ます。でもこれは、マナを使っても同じ事が出来ますよね」
「それは出来ますが……余程、鍛錬を積まないと」
鉄騎兵からの投石を防ぐ為に、マナを粘度ある天井にする事があるが、こんな弾ませて遊ぶ程、精度の高い調整は中々出来るものではない。




