世界45
先程まで、祈る者達を殺していたリーフ、今更、脅しをする必要はない。
事と次第で殺すのでは無い、事と次第によっては生かす可能性もあるだけ。
リーフの刺すような瞳に、老齢なエルフは、
「ほぅ…分かるものなのかね。リミィには表向き、我々が繁栄する為にという形で争っていたのだが……それとも、リミィは知っていたいのかい。我々の計画を」
臆する事も無く、自分達の計画が知っていたように、振舞う事に驚いてキョトンとする。
もちろん、リミィと会った事の無いリーフに、本国の計画を教えて貰える機会は無いのだが、
「簡単な事です。あなたは今、赤いモノを触りました。私は赤いモノを一度侵食された事が分かります。普通の者が、それを触る事は自殺行為である事を」
ここで赤いモノに侵食された経験が生きる。
「なるほどなるほど、これは一本取られてしまった」
我々のちょっとした仕草を見逃さずに、そこから違和感を感じ取ったリーフを素直に褒めるのだが、
「早く答えなさい!!あなた達の真の目的を!!」
それでアソリティの剣を降ろす事は無い。
「知りたいのなら教えてあげよう」
老齢のエルフが、破裂した赤いモノの上で手をかざすと、
『ズッ…ズズッ……』
「なっ……!?」
破裂して飛び散った赤いモノが、老齢のエルフの手に纏わり付いて肉体に吸収された。
赤いモノが吸収された事にリーフは驚くが、老齢のエルフは、さも当たり間の事をしたように、顔色一つ変えなかったのだが、
「さてさて、我々の計画だが、向こうと何も変わらんよ。奪おうというだけの話」
「奪う?」
「ふふっ、簡単な事だよ。奴等が資源を奪うのなら、こちらはマナを奪おうという話なのだよ」
「マナを!?」
ここで初めて、心の色を滲ませた満面の笑みを浮かべる。
「我々の世界は科学、工業が発展しなかったせいで、星の命とも言えるマナをすすって生きてしまっていた。もちろん、多少のマナなら世界のマナが枯渇する事はなかったが、何分、この世界は命が溢れすぎ、向こうからの攻撃で、世界が狂ってしまった……だから、責任を取って貰おうというのだよ」
「…………」
リーフは、老齢のエルフの計画を聞いて、アソリティの剣を降ろす。
「そうだ、向こうに赤いモノを送る事で、こちらの負担を減らし。尚且つ、枯渇し始めているマナをすらも補充する。完璧な計画だと思わないかね?リミィが出て行く時は、まだ机上の空論で、多くの者を殺さないといけなったが、ここに来て目途が立ったのだ。世界が受け入れられる生命の量が増えるのだよ」
老齢のエルフの言う通り、その計画が達成した暁には、この破滅に向かっている世界を救う事も出来るが、
「マナをどうやって、こちらの世界に送るというのですか……赤いモノも、マナを消費するのに、そのままこちらに送れば、マナは喰われて消えて無くなる」
その計画が、達成した暁の話でしかない。




