世界40
「同胞は、核爆弾から放たれた光に肉体を焼き尽くされ、肉体から無理矢理に引き離された魂は、あるべき世界に還ろうとする。しかし、本来なら少しだけの魂が、こっちの世界に辿り着くというのは難しい。こちらに辿り着く前に、異次元の狭間で魂は消滅してしまうが」
「向こうの世界の魂達と使者の魂達が混ざり合い、巨大な赤いモノになってこの世界に辿り着いた」
「素晴らしい、その通りだ」
この世界で礼人が視た者達の中には、向こうの世界、礼人が元居た魂達もいた。
「向こうで起きた爆発的な力と、向こうから来た大量の怨念が、こちらとの道を創ったが、肝心のこちらの来る術が無かった。その証拠に、こちらの世界に巨大な鉄の船を送って来た事があったが、その中は悲惨だったよ」
「悲惨?」
「肉体が異次元のうねりに耐えられ無かったのだろう。巨大な鉄の船と血だらけの人間がくっついていたよ……扉を開き、道を創ったとしても、この世界に進行する手立てが無かったお陰で、こちらを侵攻されないで済んだが、向こうで起きた爆発的な力と、向こうから来た大量の怨念が、魂を浄化する機能は破壊された」
老齢のエルフは、擦っていた弾けた赤いモノから手を離して、改めて赤い柱の方に向き直し、
「我々の計画は、向こうの世界に責任を取らせる事」
「……この赤い柱は、向こうの世界と繋がっていて、これを通して魂達を送りつける」
「そうだ。我々は平和的に」
「リミィ様の計画を奪ったんですね」
「説得はしたのだよ。エルフという種を残すには、優れた血を残すべきだと。それに間引きをすると言うのは、リミィもまた同じ考え。何かを残すかで批判をするのは筋違いじゃないかね」
老齢のエルフは「奪った」という言葉を否定せず、眉一つ動かさず、罪悪感というものを言葉に滲ませる事すらしない。
そんな老齢なエルフに対して、リーフは一歩前に出て、
「それで、あなた達の本当の目的は何ですか」
アソリティの剣先を突き付ける。




