世界43
「ここに、向こうの世界から来たアフレクションネクロマンサーがいてくれたのなら、話もしやすかったのだが……」
老齢のエルフは、自分の顎のシワをなぞる。
「……向こうの世界、リザードマン、アフレクションネクロマンサーが、この世界に来た時から、我々は異世界がある事を知った。そこで向こうの世界、アフレクションネクロマンサーがいる世界と接触を試みた」
「そんな事を……」
リーフは知らないが、アニーはその昔、アフレクションネクロマンサーの世界に送られた一族。
アフレクションネクロマンサーを探す命を受けて、多くの者達があちらの世界に送られたが、その中で礼人の住む世界に行けたのは極僅か。
運が良い者は礼人の世界に辿り着き、それなりに運が良い者は他の世界に行き、運が悪い者は異次元の狭間で死んだ。
「向こうの世界に使者を送り、向こうの世界の人間と繋がりを持つ事が出来たが、それだけであった。多くの者達を送っても、アフレクションネクロマンサーの世界に辿り着けるのは、ほんの一握り。お互いに何かをしようにも、あまりにも効率が悪すぎた……が」
老齢のエルフが、赤い柱に手を伸ばすと、赤い球が一つフワフワと飛んで来て、
「奴等は恐ろしい計画を発動した」
『パァァァァァンンンン!!!!!!!!!!!!!!』
赤い球に、苦悶の表情を浮かべた顔が浮かび上がって、すぐに破裂した。
「奴等は、我々との話をしているこちらの世界に、資源が唸るほどある事を知った。世界を巻き込んだ大きな戦争をしていた奴等には、戦争をする為の資源は、喉が出る程欲しかった……そこで考えたのだ、どうしたらこちらの世界とゲートを繋げられるかを」
「あの閃光……」
「おぉ、知っているのかい?核兵器の事を?」
麗騎兵の中で見た、人を焼き殺す光。
光に焼かれた世界は、おぞましい迄に土壌も空も人の死で満たしていて……それは、この世界よりも酷かった。
「それなら話は早い。条件としてまず、異次元の扉を開くエネルギーが必要であったが、それは核兵器によって条件は満たされた。次に、この世界への繋がる道標が必要だったが、これも簡単に揃えてみせた」
「道標?」
「そう、先程も言ったが、向こうの世界には我々の使者として何人かの者達が駐在していた」
「まさか、その人達を捕らえて!?」
「その通り、使者に送った者達を捕らえて、核爆弾と一緒に投下したのだ」
老齢のエルフは、飛び散った赤いモノを優しく擦る。




