世界40
リーフは、祈る者達の中から一人、胸倉を掴んで自分の方に向き合わせ、
「……正気を失ってる?」
「こっちもだ」
レインも、祈る者達の死体の中から、一体を手にして顔を見ると、微笑みを浮かべている。
「囮?でも……」
「アフレクションネクロマンサーと、ドラゴンを誘い込む為といっても、少しおかしい気はするな」
赤い柱の周囲で、祈らされている者達を置いて、こちらを誘い込むとしても、機銃車なり戦闘機が襲って来ても何ら不思議では無いのだが……
「彼等は、囮では無いよ」
「誰だ!!」
耳障りな赤い柱が蠢く音とは別に、人の声が聞こえ、声が聞こえた方を向くと、
「初めまして、ドラゴン君。私はこの国の首脳陣の一人というべき立場だよ」
「なんだと?」
そこにいたのは、老齢なエルフ。
周りの、祈らされている者達と同じように白装束を身に纏っている。
「冗談では無いのだな?」
「もちろん、冗談では無いが……面識が無い以上は、私が首脳陣の一人だと証明する術は無いがね」
本国の首脳陣の一人……こんな戦場の最前線で出会うというのは、普通はありえない。
普通に考えれば、そんな事を言っても信憑性は無いのは、向こうも分かっている事いるはず……それでも、自分の事を首脳陣の一人と名乗るのは、こっちを化かしたいのか、余程の自信があるのか。
「その話はひとまず置いといて。残念だが、ドラゴン君には席を外して貰おう」
「なんだと!!」
「そんなに怒らないでくれたまえ。私は、君が邪魔だから席を外せと言っているのではない。君がいると、客人が暴れて話し合いにならなそうだから、お願いしているのだよ」
「どういう意……馬鹿な、この気は……」
レインは、老齢な老人を今にも握り潰さんと掴もうとしたが、動きが止まる。
赤い柱の中から感じる気、それは、レインが想像もしていなかった相手。
赤い柱から顔を出したのは、ワニのような細長い顔をしていて……
「いけないな、自分達が絶対無二の正義だと思うのは。戦争しているのだよ?君はどれだけの命を奪った?どれだけの者達の運命を奪った?そして、どれだけの者達の運営を狂わせた?」
『ゴロゴロゴロゴロ…………』
それだけならドラゴンや、リザードマンを想像するかもしれないが、その体は蛇のように細長く、赤い雷鳴を轟かせながら現れた者の名は……
「龍がなぜ…ここにいる……」
ドラゴン族に匹敵する最強の存在……龍。




