世界39
その異様な姿は、戦う者の姿では無い。
何かの儀式をしているかのような様子は……あの者達から感じる不気味さは「何か」と関係している。
「……やるしかない」
アソリティの剣を握り締める……初めてのエルフ殺し……姿形を変えて、サイクロプスと化したエルフを殺したのとは違う、同胞を殺す禁忌……その禁忌に手を付けるのに覚悟を……
「違う……私達は騙されて来たんだ」
禁忌という都合の良い言葉。
エルフ殺しを、仲間殺しはいけない事と、当たり前の道徳を利用する事で、本国の者達は自分達の事を操っていた。
仲間を信頼する、仲間を裏切らない……その考えを逆手にして、自分達に首輪を付けて殺して来た。
首輪に付けられた犬が、主人から振るわれる暴力に、耳を垂れ提げて尻尾を丸めて、体を震わせて耐えるかのように耐えて来た……相手は非戦闘員かもしれない……けれど、戦場にいる以上は、無関係といって許される事は無い……許すつもりは無い。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!」
森から飛び出ると同時に翼を広げ、大きな赤い柱の下にいる者達を狙って奇襲を仕掛けると、
「リーフ!!!!援護するぞ!!!!」
それに合わせたかのように、レイン達が辿り着く。
「蹴散らして!!!!!!」
抜けて来る者がいないはずの森の中、戦闘機によって守られていたはずの赤い空からの強襲。
ありえないはずの状況に、祈りを捧げている者達もさぞや驚くかと思われたが、
「「「……………………………」」」
祈る者達は一声も発する事無く、立ち上がる事も無く、その場で祈り続けて……
「舐めるなぁ!!!!!!」
リーフとレイン、ワイバーン達が、無抵抗な祈る者達を次々と殺す。
リーフが振るう大剣が、祈る者達を粘土を切るかのように容易く切り裂く。
レインが吐く炎が、次々と祈る者達を焼き払う。
ワイバーン達が、祈る者達を足で握り潰し、口で噛み砕く。
一方的な戦い、このまま苦も無く勝利を掴める、今までの苦しみをぶつけて…………
「レイン!!!!!!」
「全員攻撃止め!!!!!!」
それで終われるほど、簡単な訳が無い。




