世界38
あの日、拠点から戦場へと向かう時に、助けてくれた赤いモノがいた。
「本国がやろうとしている事は、多くの人達を巻き込もうとしている……戦争をしているから被害が出てしまうのは、当たり前なのかもしれない……でも、本国がしようとしているのは、私達の未来に繋がる事じゃない、自分達の未来を確保するだけなの」
『ズゥザァァァァ………』
「このままじゃ、死んで逝ったみんなが、良いように使われて終わるだけ……お願い、あなた達の仇を討つから、もう一度、私達に力を貸して」
『ズゥザァ………………………』
礼人なら、必ずこうしていた。
赤いモノと対話して、自分の味方に付けるという事を。
リーフの話を聞いた、触手と化して獲物を求めていた赤いモノ達が、動きを止める。
少し離れた所では、まだ赤いモノが蠢いているが、それでも、リーフの周りの赤いモノは活動しないでくれる。
「ありがとう」
これで後から来るみんなも、赤いモノに襲われないで済む。
「行くね」
赤い触手が道を開けてくれる。
その道が、本国が待ち構える所まで続いていると疑う事無く、走り出す。
レインから教わった、アフレクションネクロマンサー化しての身体強化のお陰で、鹿のように軽やかに、疲れ知らずで走って行く。
前から感じる赤いモノの圧に怯まずに突き進み、この先にある野望を打ち破るという使命を抱き、
「あれが…具現化した野望……」
森を抜けた先にあった、赤い柱に絶句する。
よくよく考えれば分かる事なのだが、遠くから見えるという事は、その対象物がとても大きいという事……大きい事は想像していたが、
「世界樹…なの……?」
本国の野望は、世界樹のように大きく、太かった。
「でも…なにあれ……?」
目の先にある赤い大樹、それも圧巻であるのは間違い無いのだが、
「白い装束……?」
それに気持ち悪さを付け足すのが、膝を付いて、赤い大樹を崇拝するように拝む者達の姿であった。




