世界35
「とはいえ、向こうにとっても初めてのドラゴン戦だ。お互いに空で戦うのは初めてである以上は、私がいるこちらが有利。それに」
「それに?」
『ブゥゥゥゥゥ……』
レインが、もう一つのワイバーンの方が有利な事を言おうとした時、遠くから空気が震える音が聞こえる。
虫が羽ばたくかのような耳障みみざわりな音が聞こえると、
「ここは任せて貰おう。君は先に行くんだ」
レインが、ローリングしてリーフを自分の背中から降ろす。
もしも相手が、戦闘機を用意していなかったら、全員で敵の所に行く予定であったが、想定通りに敵には戦闘機がいた。
レインの背中から落とされたリーフは、レインの所には戻ろうとせず、
「勝って下さい!!」
「あぁ、また後でな」
地上へと落下していき、森の高さギリギリの所で翼を広げて飛んで行く。
それもレインが教えた事、相手の中には、低空飛行で飛べる者はいないと。
優れた人間が生まれたのは、生きる事に必死になって来たからで、物見遊山のお遊び気分でいる者達に、革命を起こすような者は産まれないと太鼓判を押した。
「さて、人類の秘宝を壊させて貰うか……これより、敵を殲滅する!!!!展開せよ!!!!」
『グォォォォォォォォ!!!!!!』
森の上を無事に飛ぶリーフを見送り、自分達も、うかうかとしていられないとばかりに咆哮が上がる。
先頭を飛ぶレインを中心にして、ワイバーン達が横に広がると、先の方から来る戦闘機達も横に広がる。
こちらの動きを合わせて、鏡合わせかのように同じ戦法を取る様子に、
「随分ずいぶんな自信だな」
同じ戦法を取るというのは、戦い方で決着を付けるのではなく、実力でぶつかり合って相手を叩き潰すいう宣言。
「お前達に教えてやる。俺達が勝つもう一つの理由をなぁ!!」
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『ブォォォォン!!!!!!!!』
かつて、ドラゴン達の繁栄を滅ぼした戦闘機、その牙が世界を変えて、レイン達に向けられる。
一機の戦闘機がワイバーンの背中に追い付き、機体を翻して毒針を向ける。
当たればドラゴンの鱗を砕き、喰い込めばドラゴンの肉を食らう弾丸、それがワイバーンを……
『バッガァァァァァァンンンン!!!!!!』
ワイバーンを捕らえる事は無かった。




