世界32
リーフがアフレクションネクロマンサーだというのは、もう、みんなの周知の事実。
戦力を考えれば、リーフの事を精鋭部隊に入れるのは当たり前の話なのだが……
「これに付いては、ワシが認めておる」
「ビレー様……」
動揺でざわめく者達を、ビレーがたった一言で落ち着かせる。
「みんなも分かっている事だが、姫はアフレクションネクロマンサー様だ。アフレクションネクロマンサー様が、運命を狂わせるとか……そういう難しい話はワシには分からん。ワシに分かるのは、弱き者を助け、弱き者達の為に戦う……それが、子供の頃から聞かされて来た話だ」
ビレーは昔、親から聞かされて来たアフレクションネクロマンサーの話を思い出し、
「アフレクションネクロマンサー様が戦ってくれたから、今の自分達がいる。もし、アフレクションネクロマンサー様が、助けに来てくれたら、一緒に戦いなさいと……アフレクションネクロマンサー様……私は、あなたと共に戦い、共に死ぬ覚悟があります。どうか我々をお導き下さい」
リーフと向き合って、頭を下げる。
それが、リーフが自分達の国の姫では無く、英雄であるアフレクションネクロマンサー様であると決別する……可愛い孫娘のような存在では無く、共に戦うべき英雄だと。
誰もが、ビレーの気持ちを汲み取る。
誰よりもリーフを大事にしていたビレーが、リーフを姫として扱わずに、アフレクションネクロマンサー様として戦場に立ち向かわせるというのなら、その覚悟に殉ずる。
「……部隊の編成に、変更はありません。これより、前進を開始します。皆に加護を」
「「「おぉ!!!!‼」」」
『『『バッサァァァァァァァ!!!!!!』』』
リディの合図を皮切りに、再度の出撃が行われる。
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『出立か……』
拠点から鼓動が聞こえる。
これから戦場に向かう為の、勇気を振り絞る為の掛け声。
本当なら、そこに自分も居なければならないのだが、
『リディ様、レイン殿……どうか御無事で』
ギークギラは一人、包みを口に銜えて、拠点に背を向けて走り出すのであった。




