世界30
「選択しないといけないのか……」
いつか選択を迫られる時が来る。
本人がどれだけ選択を拒否しようとも、保留する事の出来ない選択。
その選択をしないといけないのは、この世界に生まれた者か、この世界に密接に関わる者だけかと思っていたが、
「俺も、この世界に関わる者か」
異世界から来る、身元不明のリザードマンの調査の為に、ここまで来ただけであったが、どうやら深く関わり過ぎたようであった。
リディ達が選択する道をなぞり、手助けをする程度に思っていたのだが、この世界に生きる者を殺し、この世界を変えるアフレクションネクロマンサーになれるのに、部外者でいつ続けるのは虫のいい話なのだろう。
「……選択する権利を貰えるというのなら」
とは言え、選択しないといけないというのは、選択する事が出来るという事。
「では、選択をさせて貰おうか」
レインは、エルフ達の死体が転がる地上から飛び上がって、そのまま飛んで行くのであった。
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「レイン!!」
「リディ、みんな無事に来れたのか」
レインが選んだ選択は、リディ達の為に拠点を確保する事であった。
「あなた、そんな血だらけで!!」
「別に大した事は無い。ここにいたのも戦場を知らない者達で、戦いにならなかった」
拠点にいち早く着いたレインは、拠点の中にいた残存兵を始末したのだが、話にならない戦いであった。
自分達も戦場に出て、功績が欲しかったと和気あいあいと談笑し、自分達が勝つと疑わずに油断をしていた所に、レインが上空から強襲したのだ。
それはメダカの学校に、大型のサメが襲い掛かったかのように、新兵達は一方的に暴力を振るわれて死んだ。
「リディ、それよりも話がある」
「話?話って?」
「これからの事だ」
体の血を拭うおうともせずに、レインはリディの側に寄る。
「君達は、ここで休んでからこの先に来るんだ」
「レインは?」
「私は先に行く」
「なんで!?」
「……急げば、選択を二つとも選べるかもしれないからだ」
レインは、リディ達の安全を確保するという選択をしたものの、選ばなかったもう一つの選択肢も、気になって仕方無かった。




