世界27
「恨まないでやってくれよ……」
命を擲って戦ったエルフに対して、同情をする。
戦場では未だ、炎と混乱の中で同士討ちする者達、鉄騎兵とワイバーンの波状攻撃で、苦悶の地獄の責めを受けている者達がいる。
指揮官ならば彼等を助けないといけない、地獄の底から反撃の糸口を見つけるなり、撤退をするなり、何かしらの指示を出さなければならないのだが、彼はそれをしなかった。
戦場に残された新兵達は、泥沼の戦場で戦い続けるだろう……なにせ、戦う為の武器があるのだ。
これで武器が無ければ、戦場から逃げ出そうとする者もいるかもしれないが、
『『『ドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッドッ!!!!!!!!!!!!!!!!』』』
なまじ、戦う為の武器がある為に命を守ろうと、生き残ろうと戦ってしまう。
戦う手段がある限り、指揮官からの指示が無い限りは、彼等が自発的に逃げ出す事は出来ない……しかし、そんな事は彼も分かっていた事。
それを分かっていて、部下達を見捨ててまで、その身を焼いてまで自爆したのは……
「同情はするが、手加減はしない」
彼が、仲間を犠牲にしてまで逃がした者達を追う。
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「拠点まで下がるぞ!!そこで援軍が来るまで籠城を行う!!」
指揮官が稼いでくれた時間を無駄にしないように、陣にいた者達を引き連れて下がる。
(予備の機銃車から機銃を取り外して城壁に備えれば、奴等だって……)
もう勝つ事は考えていない、引き連れている者達には申し訳ないと思いながらも、これからする事が、助かる為の戦いでは無く、時間を稼ぐ為の戦いだというのは伝えない。
それを知ったら、戦功を貰えると思って、戦場にやって来た彼等は歩けなくなる。
死を覚悟をしていなかった彼等を使うには、騙すしかない。
「遅れるな!!遅れたら死ぬぞ!!」
人を騙して、生き残れると思っている者達を死地へと連れて行く自分……その罪を、あの世で償うとなったら、どのような責め苦を受けるのかと、心が潰されそうになりながらも、それでも、指揮官の遺志を継いで罪を被ろうとしていると、
「動くな!!動けば命は無いぞ!!」
自分達の後方から、羽を持つリザードマンが追い付いて来ていた。




