世界26
この戦場に残された者達は死ぬ、死ぬからこそ、もう手助けする必要は無い。
援護を送る事も無ければ、給弾をする必要も無い。
無いからこそ、全ての弾丸がレインに襲い掛かる。
『『『ガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッ!!!!!!!!!!!!』』』
(もう少し……)
レインは歯を喰いしばる。
空に上がる前に見た、用意されていた弾丸が詰まっていた木箱は数はあったが、それを一斉に打ち上げている。
この弾丸の濁流さえ耐え切れば、追撃は無い。
『『『ガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッ!!!!!!!!!!!!』』』
「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!!!!!!!!!」
長時間戦うはずの弾丸を、短時間に濃縮されて受けている。
(もう少し……)
『『『ガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッ!!!!!!!!!!!!』』』
(もう少しだ……)
普通の者なら死ぬであろう状況下でも、取り乱さずに目を細めて、周囲の状況を見極めて、
『『『ガッガッガッガッガッガッガッガッガッ…………………………………』』』
「…………抜けたか」
自分の体を喰い破ろうとしていた弾丸が通り過ぎると、嘘のように静かになる。
ストレッチをするように手足をブルブルと振るうと、体に食い付いた弾丸と、砕けたウロコが散る。
「致命傷にはならなかったか」
あの時、アフレクションネクロマンサー化して、力を爆発させて弾丸を弾き返す選択肢もあったが、それには、それには一度体内の中で力を溜めて、放出する必要があった。
そうなると数秒は無防備になってしまい、数秒間続く弾丸の濁流をもろに受ける事になる。
だからこそレインは、数秒間の弾丸の濁流に合わせて、数秒間の肉体の強化で耐えた、鱗を壊されて、肉体に傷を受けたが、それでも致命傷には程遠い。
無事に耐え切れた事に、胸を撫で下ろすように大きく溜息を吐き、肩の力を抜きながら地上へと降りていくと、
「……ただのドラゴンなら殺せてたよ」
爆発した地上には、マナで焼かれてボロボロになった死体が、一つだけ横たわっていた。




