世界22
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(引かないのか……)
初めてといえるであろう、空を飛ぶ者との戦いで、しっかりと対空の準備していた指揮官。
上空と地上とで挟み込む作戦は、指揮官が無能では無く、優秀である事を教えてくれるのだが、撤退をさせる気配を見せない。
「……良いだろう」
『ドッドッドッドッドッドッドッ!!!!!!!!』
自分の近くを弾丸が飛ぶが、恐れる事は無い。
羽ばたく回数を最低限にして、相手に向ける面積を減らす事で被弾する可能性を極力減らす。
真っ直ぐに、一本の槍のように飛ぶ事こそが、攻撃を躱す術だというのを知っている。
相手からすれば、撃っているのになぜ当たらないと困惑する事であろう。
「悪いが、それとの戦いは初めてでは無い」
レインは、機銃車の群れの中に入り込むと、
『ダァァァァァァァァァン!!!!!!』
大地が揺れる程に力強く、着地する。
「あっ…あぁ……」
自分達の巣の中に入り込んだ敵を、凝視する機銃車の銃手と操縦士達は手を止めてしまう。
この状況がどれ程まずいのか、知っている。
接近されて肉弾戦に持ち込まれたら、オークのような肉体を持たないエルフがどうなるかを、耳にタコが出来る程に教えられて来た……その状況で、オークよりも大きな存在が目の前にいて……
『バッッガァァァァァァンンンン!!!!!!!!!!!!』
羽を持つリザードマンが、一台の機銃車を吹き飛ばす。
自走させなければ、決して運ぶ事の出来無い機銃車が、銃手と操縦士を乗せたままグルグルと宙で回転しながら吹き飛び、
『ダッガァアァアアガッアァァァァァンンンンン!!!!!!!!』
鉄の塊の機銃車が、地面で何度か跳ねて転がり、何十メートルも転がってやっと止まる。
「「「………………」」」
「……グゥオォォオォォォォォォオォォォ!!!!!!!!!!」
全ての兵士達が力の差を目の当りにして、静まり返る中で、レインが咆哮を上げると、
「「「うっ…うわぁぁぁぁぁあぁあぁあぁぁぁぁ!!‼!!!!!!!!」」」
『『『ズッドッドッドッドッ!!!!!!!!』』』
咆哮に当てられた兵士達が、反乱狂になって弾丸を撃ち始める。




