世界15
落ち込んだはずだったのに、嘘のようにあっけらかんとする、ビレーに言葉を失ってしまうが、とうの本人は晴れやかな表情をして街の方角に顔を向ける。
「こんな日が来るなんてな」
「こんな日?」
「うむ、ワシの時代には何も起こらず、後進の者達に思いを託す事が精一杯かと思っていたが……一つの区切りというのが見えた……これも、みんなのお陰だ。死んで逝った者達も、さぞ死んだかいがあったと喜んでいるだろう」
「…………」
みんなのお陰……ビレーはそうは言うが……いや、言いたい事は分かるが、まだ生きていて、これから殺される者達を考えたら、そんな気持ちにはなれないが、
「もちろん、こんなのは空元気だ」
「空元気?」
「今まで必死に戦っていたのが無駄死にで、何の為に苦しい思いをしたのかと胸が張り裂けそうで……愛する妻が殺されないように、最前線で戦い続けたのが、今こうして本国に捕らわれて殺さそうになっている……それを考えたら、我々は元から死ぬ覚悟があるから大丈夫なんて、口が裂けても言えないが、言うしかない」
「ビレー……」
それはビレーも一緒であった。
本当は口惜しくて、今すぐにでも街に戻って、助けられる者達を救いたいと願っているのだが、そんな事は出来無い。
「決して納得出来るものでは無い…………許せ妻よ!!友よ!!ワシはこれから真の敵を討つ!!そして仇を討つ!!お前達が味わった苦しみ以上の苦しみを敵に与える!!!!それが、老人となってまで命を留めて来たワシの使命だ!!!!!!!」
「うん……」
ここで初めて、リーフの胸のつっかえが取れた気がした。
綺麗ごとでは済まない状況、それを何とか納得しろと言われたら、きっと胸の中でしこりとなって渦巻いていただろうが、
「……リーフ、みんなのを見捨てる事になるのに、罪悪感を感じているのだろ?だったら我慢する事は無い。その原因となる者を憎め、怒り込めるんだ。原因は我々にあるのでは無い、こんな状況にしたのは本国の連中なのだから」
「うん」
リーフは、本国の方角に拳を突き出して、
「私はやるよ……敵を討つ……私達の敵を殺す……」
自分のドス黒い感情を包み隠さず口にすると、胸のネックレスは淡い翡翠の光で、リーフの想いに応えるのであった。




