世界14
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日が落ちて日が登り、また日が落ちて夜を迎えた頃、リーフは城壁から自分達の街の方角を見ていた。
「みんな、ごめん……」
一つ目の化け物、サイクロプスとやりあって気付いた事が一つあった。
あれは、オーク達と同じ創られた存在……それが何を意味するかというと、街にいるみんなが捕らえられて、あのサイクロプスを生み出す材料にされてしまう。
今回のサイクロプスの中から、みんなを感じなかったが、もう日数が経っている。
連れ去られていると考えるのが妥当で、希望があるとすれば前にも言ったように、異変を感じて逃げ出してくれた者が少しいるかもぐらい。
「礼人…お母さん……」
鉄騎兵に殺されてしまった母、しかし、蓋を開けてみれば、本国が世界を掌握しよとしていたのを止めようとしていたリミィ様と、かち合ってしまったという不運。
本来なら、リミィ様に下に行くはずだったアフレクションネクロマンサー様を、自分の元に呼び寄せてしまったばかりに、リミィ様が本国に仕掛けるはずだったエアリアを始末してしまった。
本国という悪の根源を守ってしまっていた自分達のやるせなさといったら……
「こんな所にいたのか」
「おじい様……」
後悔の念に押し潰されそうになっていた所に、ビレーがやって来る。
「ワシはの、ずっと戦場で英雄と呼ばれて来た……それこそ、オークのアフレクションネクロマンサーと囃し立てる者がいたほどじゃ」
「うん……」
自分がずっと好きだった話、どんな状況でも、どれだけのリザードマン達に囲まれようとも、決して諦めずに立ち向かった話だが、
「それも全て、無駄じゃったのかのぅ……」
ビレーは城壁に手を付けて、がっくりと肩を落として首を垂れてしまう。
自分達がして来た事が無意味だと後悔するのなら、年の分だけ、ビレーは後悔する事がある。
「そんな事無い!!おじい様達が頑張ってくれたから、私は生きてる!!」
「しかしのぅ……死んで逝った者達もおる……」
「だって、そんなの分からないじゃない!!その戦いが無意味だったかどうかなんて……!!」
「…………」
「おじい様が無駄だと思っている事が、今までを繋いで来てくれたじゃない。亡くなった人達を犠牲にして生き延びたのじゃない……死ぬはずだった運命の中から、助かる人達を生み出したんでしょ」
いつも優しくて、力強くみんなを支えてきたビレーの落胆する姿に、リーフが優しく、力強く励ますと、
「そうじゃの、無駄では無かった」
「えっ……」
ビレーは、城壁の縁を掴んでいた手を腰に当てて、胸を張る。




