世界13
自分達を散々苦しめた赤い液体、その有効性は今も薄れたとは言い難いのに、本国は赤い液体に興味を示さなかった。
「考えられるのは、向こうも赤い液体を創れるようになった。それか、赤い液体以上の何かを生み出したか……クズだな……」
アルフアは、親指を噛む。
自分達、末端の者達が命を掛けて戦て来た時間に、本国では新たな物が生み出されていた。
血を流し、涙を流し……悲鳴を上げて、苦しんでいたのに、本国はその新たな物を何一つこちらには回さず、自分達の数が減るのを指折り数え……そして今日、オークの間引きが行われた。
「ここに、あの一つ目の化け物を送って来たのは、我々を完全に殲滅する為に……」
「もしくは、撤退させたかったら」
「撤退させたかった?」
リーフは、自分のお鉢の中に溜まっている、考えの水を揺らす。
「実は、あの一つ目の化け物はアフレクションネクロマンサーの世界では「サイクロプス」と呼ばれているそうです」
「サイクロプス?」
「それだけじゃありません。あの機銃車も、アフレクションネクロマンサーの世界の兵器をマネて造っているそうです」
「……向こうと繋がるゲートがある」
リディは、リーフの考えを聞いて「何か」の尻尾を見る。
「こちらが、アフレクションネクロマンサーを連れて来る為に鉄騎兵を送ったように、向こうもアフレクションネクロマンサーをこちらの世界に連れて来ていた……戦える戦力を出来るだけ呼び集めましょう。ギラ、頼めるかしら」
(ただちに)
部屋の隅で座っていたギークギラが立ち上がり、その場を後にすると、リディも椅子から立ち上がり、
「レイン、どれくらいで回復出来そうですか」
「三日は欲しい」
「なら、二日は休養、残り一日は体力を回復させながら拠点に向かい。足掛かりとなる拠点を取ります……皆さん、問題はありませんね」
「異存はありません」
「はい」
「では、休息に入りましょう。作戦は始まりましたから」
休息という名目ではあるが、実際は、戦う為の調整の時間でしかない。




