異世界のアフレクションネクロマンサー732
「それに、下手に刺激しない方が良いわ。ニードゥスは才覚ある者を大切にする人で、フレンというのはその人の息が掛かっている人なのでしょ?だったら、今すぐに殺されるという事も無いし、酷い目にもあう事は無いでしょ」
「しかし、幽閉は……!!!!」
「幽閉程度で済むなら、それに越したことは無いはずよ」
血相を変えて喋るアルフア、顔色を変えないリディ。
(まずいな……)
この対局する構図を見て、レインは目を細める。
フレンという者が、どういう人物なのかは知らないが、どれほどの人物かは、周りの者達の動揺が物語っている。
自分達がエルフだと変わらない存在、自分達は消されてしまう存在だと言われても、体を震わせながらも耐えていたが、フレンという人物が連れ去られたと聞いた途端に、ざわつき始める。
(女王蜂が攫われたか……)
これは、遺伝子レベルというのだろう。
生まれたばっかりのヒヨコが、目の前の親鳥にすぐに引っ付く様に、オークもまた、エルフと主従関係になる様に、無意識レベルで仕込まれている。
オーク達がいざとなれば、エルフの為に死ねるのも、そのせいだとも言える……が、その遺伝子レベルに組み込まれた忠誠心が、無意識に連れさられたフレン、エルフ達を救えと……
「静かにして!!!!今は、私が大事な事を聞いてるの!!!!」
(ほぅ……)
ざわつく場の空気に飲まれて、暴走しそうになっていた者達が、一瞬で静まり返る。
「しかし、リーフ……」
「お父様は、連れ去られた後は、幽閉される位で済む……取り返しは付く。けれど……ここでリディさん達の話を切ったら、この世界に起きている問題を知ることは出来無い」
「だが、万が一にでも……」
「私達は散々、沢山の者達に死ねと命令し、多くの者達がその命令に従いました……なのに、それは全て利用されていたのです」
リーフは、握り締めていた拳を自分の胸元に掲げ、
「このままでは、死んで逝った者達は犬死にです……私は、命を投げ打った者達の命が、未来に繋がる尊い犠牲にします」
覚悟を決めたリーフは、アルフア達の方を振り返り、
「ここの指揮は、私が執ります。そして、これは命令です。連れ去られた者達の命は、ニードゥスがいる限りは保証される。それなのに、あの機銃車に立ち向かって、私達が全滅する事は愚策としか言えません……今は、機会を見付ける為に、話を聞く事を優先します」
父を、見捨てる事を宣言する。




