異世界のアフレクションネクロマンサー724
「これも後で話す事になるけど、サキュバスって実は短時間なら飛べるの」
「短時間なら飛べる?本当なんですか?」
それは初耳であった。
サキュバスには羽があるのだが、飛んでいる所など一度も見た事が無くて、見た事があるとしたら、夏場に羽を羽ばたかせて涼を取ったりする所だろうか。
「飛ぶと言っても、鳥のように翼を羽ばたかせて飛ぶ訳では無いの。滑空して空を飛ぶのよ」
「滑空して?」
「そうよ。アフレクションネクロマンサーは、町には必ず滑空をさせるための塔を造らせたの。リザードンに襲われても、すぐに遠い地へと避難出来るように……アフレクションネクロマンサーは、ちゃんと考えていたのよ。捨て駒としてでなく。彼等の幸せを祈って」
「そうなんですね……」
オークとドワーフの真実を聞かされて、アフレクションネクロマンサーに対して、悪い印象を抱き始めていたが、サキュバスが創り出された話を聞かされると、胸の中に出来始めていたつっかえが消えたような気がした。
リーフの表情が和らいだのを見て、リディの険しい表情も和らぐが、
(今はしょうがないわね)
内心では、表情は険しいままであった。
実は、サキュバスの話には裏がある。
最初の頃のオークは、リザードマンに対抗する程の力が無かった。
それは何故かというと、死体から生み出すオークには生殖気が無かったからだ。
男性器が無いから、女々しくなった……この冗談みたいな話だが、初代のアフレクションネクロマンサー曰く、男性器が無い事でホルモンバランスが崩れて、力を発揮出来無いというのだ。
小難しい話は分からなかったが、要は死体から生み出された物では無く、生物を創らなければならいという事であった。
しかし、死んで蘇った者に、エルフの女性を宛がう事は出来ず、そこで、同じく死んだ女性のエルフから、サキュバスを創り出したのだ。
そして、それと同時にサキュバスに羽を与えたのは、将来、兵士になる子供を守らせる為。
子供がいても抱き抱えて……もっと言えば、腹が膨れていても、サキュバスが飛んでしまえば、リザードマンに襲われても逃げ切れる。




