異世界のアフレクションネクロマンサー719
(見た物を答える……)
それは深く考えてはいけないという事。
見ただけの違い……それは、リーフとレンスの違いではなく、エルフとサキュバスの違いを答えろという事。
リーフは、サキュバスの足先から頭のてっぺんまで舐めるように見る。
エルフという自分と、サキュバスという彼女の違いを見る為。
自分の大きな体格を忘れて、彼女の姿を自分と照らし合わせて、見ただけの違いと言えば、
「サキュバスには羽がある」
「そう、それこそが答えに辿り着く鍵」
サキュバスには、コウモリのような羽があという事。
レンスは再び頭を大きく頷かせ、今度は、正しい答えを出した事を伝えて、
「それでは、その鍵に相応しもの見せよう」
「相応しいもの?」
『バサッ……』
次に、手にした鍵が導く先を見せると言うと、レンスは羽を背中の方に回し、リーフから出来るだけ羽が見えないように畳む。
「私から羽が無くなったとして、魔法を使えるとかは抜きにして、エルフとサキュバスの違いはあると思う」
「それ…は……」
リーフは、目の前にいるサキュバスという人種が、エルフの女性に見える。
子供の頃から、サキュバスという人種が側にいて、優しくしてくれて……当たり前のようにいた人種なのに……
「あなたも、ついにこの世界の真実の前に辿り着いたわ」
リディが前に出て来ると、レンスの横に立つ。
「あなたはさっき、サキュバス、オーク、ドワーフも異世界から召喚されたと言ったけど、それは大きな間違い。彼女達は、この世界の住人よ」
「だって!!さっき言ったじゃないですか!!この世界は元からエルフしかいなかったと!!」
体が震える。
真実の先から、答えが蠢いている。
あれほど、知りたいと思っていた真実が恐怖に包まれ、闇夜の中で這う虫のような気持ち悪さが、襲って来る。
「そうよ。その言葉に偽りは無いわ。そして、偽りが無ければ答えは一つよ」
リディは、横にいるレンスを見つめて、
「サキュバスも、オークも、ドワーフも同じエルフなの。派生種とかではなく、エルフそのものなの」
「そんな…事が……」
その答えは、その場にいた全員を狼狽させる。




