異世界のアフレクションネクロマンサー712
「…………」
リーフは、自分の中でぼんやりと浮かんだ事を思う。
リディを殺せば決着が付く、多くの者達の死が報われる。
残虐非道に殺された者達の仇、鉄騎兵に殺された母の仇……自分達の命と引き換えにすれば、凄惨な事が一つ終わる。
そして、リディを討ったとして父はそのまま将軍として召し抱えられる。
選択としては十分に問題無い……後は、自分達が死ぬ覚悟を決めるだけだが、
「それは…出来ません……」
「そう」
リーフの選択はノーであった。
昔の自分なら、この状況を千載一遇の機会だと迷う事無く剣を振り、リディを殺していたが、
(殉ずる覚悟……)
今の自分には、その選択肢を選んで殉ずる覚悟は無かった。
今の自分は、街の長の娘という肩書だけではない、今の自分は、アフレクションネクロマンサー。
ここまで礼人が自分の事を守ってくれたのは、リディを斬り捨てる事?
(そんなのは違う)
礼人が命懸けで戦って、自分が人でなくなっていく恐怖すらも跳ね除けて、必死に……必死にアフレクションネクロマンサーでいたくれた事が、リディをここで討つという事であると思えない。
「……リディ様、よろしいでしょうか」
「はい、どうなさいましたかレイン」
「はっ、あちらをご覧下さい。もう一人のアフレクションネクロマンサーは、アニーと共に休眠しております」
「目覚める事は?」
「いつ目覚めるかは分かりませんが……アニーさんの口ぶりで考えれば、かなりの年月を必要とすると思います」
「そう……彼ほどの逸材を失うのは、大きな痛手ですね」
レインも、リーフの答えの意図が分かっているのか、話を推し進めるために、もう一人のアフレクションネクロマンサーがどうなったのかを伝える。
するとリディは、レインからの知らせに動揺する事無く頷いてから、
「でしたら、あなたの……お名前を教えて頂けますか」
「リーフと申します」
「リーフさん、私達にあなたの力をお貸し下さい」
リーフにゆっくりと手を差し伸べるのであった。




