異世界のアフレクションネクロマンサー711
人懐っこい猫が瞳を丸くするように、彼女からは敵意を感じられない。
(でも…この人が……)
全ての諸悪の根源。
みんなの中で、リミィ様が既に死んでいるというのを知っているのは自分だけ……リミィ様と、目の前のリディが反乱軍を創設した……この二人が死んだとなれば、彼女達の軍は瓦解していくかもしれない。
もちろんそんな事をすれば、自分達は皆殺しにされるが、それでも千載一遇の機会……国を守る為の兵士ならば、ここで剣を抜いて……剣を振り抜いて……
「何かを選ぶって、本当に大変だわ」
「えっ?」
リディは、朗らかな表情を浮かべたまま話をしだす。
「何かを決める時は選択をしないといけないのに。選択が早い方が良い時もあれば、遅い方が良い時もある。選択の選択というのかしらね……?私が大きな選択をしのは、リミィから一緒に来て欲しいと言われた時に、すぐに彼女の元に行ったこと。もしもあの時、考える時間を作っていたら、私は今も自分の国で、何もせずに生きていた……ふふっ、ごめんなさいね、変な話をして」
「いえ……」
「私が言いたいのは、選択をすると言うのはとても難しいという事なのに、答えは選択をしてからじゃないと出せないという事かしら?そう、だからこそ、選択をする時は覚悟を決めなさい。後悔しないようにでは無く、選んだ選択に殉ずる覚悟を持ちなさい……猶予を上げるは、時間一杯まで使うか、すぐに答えるかはあなたの自由。さぁ、アフレクションネクロマンサー様を紹介するかしないか、決めて頂戴」
(この人…気付いてる……)
リディは、リーフの選択に気付いている。
それは殺意とも言えない、可能性の一つを思い浮かべた程度の話だが、それでも迷った事に気付かれている。
リディは与太話をした訳でもなく、ましてやアフレクションネクロマンサーを紹介するかの選択をさせているのではない、自分の事を殺す選択と、時間を与えているのだ。




