異世界のアフレクションネクロマンサー705
それは優しさからではない、周りの者達は静かにという厳命を守っているから、ざわめき一つせずに、誰一人口を開かないが、
(やはり、あの子か)
口を開かないこそ、目が物を言う。
周りの者達の視線が、年老いたオークに抱き寄せられているエルフに注がれる。
「その子は…ふむ……」
彼女を抱き締める、年老いたオークの目は鋭い。
その目には、この子には関わるなという強い意志を感じる。
「……私は何も、興味本位でアフレクションネクロマンサーに狂わされた者と会いたいと言っているのでは無いのです」
アフレクションネクロマンサーは、この世界では絶対的な存在では無いのは分かっているが、それでも腐っても鯛。
アフレクションネクロマンサーが生み出した歪みは、何かの役に立つかもしれない。
「私自身がアフレクションネクロマンサーだからなのです」
「な…何を言ってるんですか?」
「はぁぁぁぁぁぁぁ…………」
レインは赤い体を、雷の宿る黄金の体に変化させ、
「うぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」
「そんな……アフレクションネクロマンサー…………」
生命力を爆発させると、体を白金化させる。
「ば…ばかな……」
「リザードマンがアフレクションネクロマンサー様に……」
静かにという厳命を受けていた者達がざわめくが、それも無理の無い話。
彼等にとっての伝説の英雄、みんなを救う救世主、神にも等しいアフレクションネクロマンサー様が、敵対しているリザードマンにもいる等と、到底受け入れられない事だろうが、
「アフレクションネクロマンサーと一緒にいたのなら分かるでしょ。この私がアフレクションネクロマンサーと同じ力を持つ者だと」
実物を見せられて、信じない訳にはいかない。
「アフレクションネクロマンサー同士、惹かれ合ってここに来たのですが、もう一人のアフレクションネクロマンサーは、眠りに付いてしまいました。だから、アフレクションネクロマンサーが残した人に会いたいのです」
こんなのは建前、アフレクションネクロマンサーがこちらに来ていると予測を付けて、捕えに来ただけ。
そんな、アフレクションネクロマンサー同士だから導かれてというのは無いのだが、周りの者達は戸惑いながらも話を受け入れているが、
「オヤジ……」
「話し掛けるな!!!!」
女性のエルフを抱き締める年老いたオークは、逆に警戒心を強めてしまう。




