異世界のアフレクションネクロマンサー699
リーフの中で複雑な感情が芽生えて、動きが止まる。
アニーさんの話をする時の礼人は、とても寂しそうだった……死に別れなのは間違い無いのだが、それでも魂だけはどこかにいるのではないかと探し続けて……想い続けて……日にちが経つほどに、絶望が色濃くなり……アニーさんの話をする礼人に、力は無かった。
礼人が心から切望したながらも、もう二度と会えないと苦悩していた相手……そんなアニーさんと礼人が一緒にいると聞いて、礼人を手放したくないという自分の想いが、酷く醜くく思えて、動きが止まる。
「……ここは危険だ。離れるぞ」
レインは大人しくなったエルフを胸に抱えて、崩壊していく赤い大樹から離れる。
本当は、ここは対しては危険では無い。
赤いモノは、中心となるアフレクションネクロマンサーをアニーさんに奪い返された時点で、赤いモノに、これだけの怨念を一つにまとめる術は無い。
崩壊する赤い大樹に気を付ければ、その場に留まっても良かったが、何となく手の中にいるエルフが可哀想に思えて、この場に留まるのは、逆に彼女にとって毒だと考えて、その場から離れる。
「あっ……」
「……どうする、行きたいか?」
「…………」
リーフは黙って、首を横に振る。
ドラゴンからの問い掛けは、優しさなのかもしれないが意地悪でもあった。
お願いすれば、きっとあの赤いモノが集められている大樹にまで連れて行ってくれるだろうし、お願いすれば、あの中から礼人を取り出すのも手伝ってくれるかもしれない……けれど……
「そうだ……アニーさんが、あぁするしかないと判断したのなら、あれが最善な答えなんだ……我々は、手を出すべきではない」
その先の事を考えられない……礼人の様子がおかしいのは薄々感じてはいた、どこか生き急いで、自分を主軸にして、全ての物事を早く進めたいと……時間が無いと焦っているようで……
あの赤い大樹の中から礼人を取り戻しても、礼人を救う事は自分には出来ない。




