異世界のアフレクションネクロマンサー696
一族の呪い……アフレクションネクロマンサーを崇拝する事に疑問を感じず、挙句の果てには、アフレクションネクロマンサーを生み出すという方法すらも模索し、その犠牲者が礼人になってしまう。
(あの日…私が命を燃やして、鉄騎兵を始末すれば、全て問題無く解決したのに……エアリア…あの空を浮かぶ妖怪を創り出したのも、私です)
ギークギラからの報告で、エアリアとアフレクションネクロマンサーの戦いの詳細を聞かせて貰ったのだが、
(アフレクションネクロマンサーが、エアリアを倒したと聞いた時は胸が躍りました……アフレクションネクロマンサーになった礼人が、私の創った傑作を退けたと……けれど、アフレクションネクロマンサーが一度死んで、その後に、霊力が使えるエルフの手によって生き返って、エアリアを堕としたと聞い時から、不吉な予感を感じ続けていたのですが…………)
その報告は、自分の愚かさを再認識させた。
死んだ人間が生き返るという事は有り得るには有り得るが、礼人の死はその「有り得る」という話では無い。
肉体から離れた魂が戻り、息を吹き返したのではない。
ギークギラから聞かされた話では、礼人は一度赤いモノに取り込まれて繭になっていたと……その時から礼人の肉体は……
この言葉を言うのは、とても辛い……けれど、そのとても辛い事から逃げたら、それこそ礼人を裏切る事になる。
アニーは、赤い大樹の中に眠る礼人を見つめて、意を決すると、
(礼人…君は妖怪化してしまっている……)
自分がしてしまった最大の過ちを、言葉にする。
霊能者の妖怪化……元の世界にいたのなら、街を一つ封鎖し、全ての霊能者を総動員し、全ての武装の使用を認めて、消滅させないといけない存在。
それ程までに危険な存在にしてしまったのは、自分が創り出したエアリアが原因。
(礼人、あなたが強くなったというのは、戦略的な戦い方をした事だけではありません。赤いモノを受け入れてもなお、仲間を守る為に、赤いモノを制御していますね)
礼人は、妖怪化した自分を制御している。
赤いモノに完全に乗っ取られていたら、みんなを飲み込んでいただろうが、礼人の霊能者としての誇りが、超えてはいけない一線を守り通している。
(その精神力は、もう子供とは言えない……あなたは立派な霊能者です)
アニーは、礼人の成長ぶりを褒め称えると、赤子に手を差し伸べる母親のように、赤い大樹へと両の手を広げる。




