異世界のアフレクションネクロマンサー694
自分の元から離れて行く、この世界で出会った師をしてくれた人。
短い時間であったが、新たな扉を開いてくれた。
気持ちは「行かないで」と言いたいたが、言えない……あのアフレクションネクロマンサーとアニーさんの関係を考えれば、その言葉は掛けてはいけない。
自分がするべき事は、自分の元から離れて行く人を見送る事だけだが、
(あぁ……何も言わずに行くのは寂しいですよね……私は、これから贖罪をしに行きます)
「贖罪?」
(あの日、鉄騎兵を倒す為というのもありましたが、私は礼人なら、この世界の運命を狂わせる事が出来ると思って、アフレクションネクロマンサーにしてしまいました……しかし、それはあまりにも楽観的な考えでした)
アニーさんが、こちらの気持ちを汲んで、話しをしてくれる。
(技術の流入、生態の変化、命の変換……そしてゲートが創られてしまった……この世界はもう、アフレクションネクロマンサーですら狂わせるのは難しい状況……アフレクションネクロマンサーはもう、この世界で奇跡を起こす存在では無かった……)
今に思えば、アフレクションネクロマンサーという存在に、あまりにも引っ張られてしまっていた。
リザードマンに滅ぼされそうになっていた、エルフの運命を狂わせたアフレクションネクロマンサー……その多大な貢献に、いつまでもアフレクションネクロマンサーは我々を救う奇跡の人と刷り込みをされてしまっていた。
(礼人はただ……人工的にアフレクションネクロマンサーを創る、実験体になってしまったのです……私のせいで……)
アニーが思い浮かべていた結果と現実とでは、隔たりがあった。
その隔たりの結果、礼人は赤いモノに乗っ取られて、大樹の中で脈動する羽目になってしまう。
(礼人をアフレクションネクロマンサーにした罪は、私がアフレクションネクロマンサーになる事で、償うのです)
「アニーさん……」
アニーさんの告白。
ずっと後悔していた罪を償う為に、アニーさんは、乗っ取られたアフレクションネクロマンサーに向かう。
足を止める事無く進む、アニーさんの気持ちが分かった……もう「行かないで」言う気持ちは無い。
(最後に……アフレクションネクロマンサーの「アフレクション」の意味は?)
「良い意味でも、悪い意味でも無い……「狂わせる」それがアフレクションの意味」
(そう……気を付けなさい、アフレクションネクロマンサーの力を手にしたその時から、アナタは「狂わせる」者になっているのです)
「はい……」
最後の教えを胸に刻み、乗っ取られたアフレクションネクロマンサーの元へと行く、アニーさんを見送る。




