異世界のアフレクションネクロマンサー693
その為に、常に全力とまでは言わないが、力を抑えて、燃費を下げる事が出来無かった。
常にエンジンを吹かしているような状態で、じわじわと体力が減っていき、その結果、戦える時間を潰されてしまった。
敗因を考えろと言われれば、アフレクションネクロマンサーとなる事が、これ程までに疲弊する事だと知らなかった事が原因。
(そうですね、それは正解ですが……礼人、アナタは本当に強くなりましたね)
『ドックン!!!!』
アニーさんは、自分の方から視線を外すと、今度は乗っ取られたアフレクションネクロマンサーが脈動する大樹の方を向く。
(レインが、アフレクションネクロマンサーになったばかりで、力の制御が出来ない事を判断すると、赤いモノを矢継ぎ早に襲い掛からせて、一気に力を消費させた)
「うっ…そういう事か……」
あの無駄だと思っていた、超弩級ドラゴンの手の襲撃。
アフレクションネクロマンサー化している自分に対して、無意味な行為だと思っていたが、あの時点で乗っ取られたアフレクションネクロマンサーは勝利を確信していた。
相手の体力を減らす……とても単純な方法だが、生命力を使うアフレクションネクロマンサーにとっては、とてつもなく相性の悪い戦法。
あの時点で自分はもうボロボロな石橋で、乗っ取られたアフレクションネクロマンサーは、叩けば壊れると分かって、崩壊させようとしていた。
(前にも言いましたが、ドラゴンの誇りを持つ事はとても良い事だと思います。実際、種として見れば、ドラゴンより優れた種というのは、そうそうはいません)
「アニーさん?」
アニーさんが宿る麗騎兵が歩き出す、四本の脚を歩かせて乗っ取られたアフレクションネクロマンサーがいる、大樹へと向かう。
(けれど、ドラゴンの力が必ずしも、絶対的な物だと思うのは危険だというのは肝に銘じておきなさい)
「何をしに……?」
アニーさんは振り返る事無く、足を止める事無く、頭の中に声を響かせながら、自分の側から離れて行く。
(礼人はもう限界です。他の人が受けるはずだった運命を受け入れた……アフレクションネクロマンサーといえど、他人の死の運命を受け入れて、それを狂わせる事は難しかったのでしょう)
それはまるで、最期の別れのように振り返る事無く、離れて行く。




