異世界のアフレクションネクロマンサー691
『ドックン……!!!!』
「アニー」その名前を聞いた途端に、赤いモノが脈動する。
心臓が脈打つように、全ての赤い大樹が一斉に震えるが、
「………っ!!」
震えを起こしたのは、ずっと先の方にある大樹の一本が震えたから。
大樹の一つだけが大きく、強く震える……何か、真実を見付けたかのように、脈動して震える。
「そこ…かっ……!!!!」
直感が訴える。
あれは本物だと、あそこに乗っ取られたアフレクションネクロマンサーがいると訴える。
赤いモノの全てが止まる……自分の事を掴んでいた、超弩級ドラゴンの手すら動きが止まっている。
それは乗っ取られたアフレクションネクロマンサーが見せた隙であり、それは絶好のチャンス。
アニーさんから、早く降りなさいと言われたが……瞳が自然と細くなる……目が勝手に、獲物を狩る時の目になる。
(体の中に残る力を全て爆発させて……)
あの距離なら間違い無く届く……翼を一羽ばたきさせれば、それだけで届く。
手に霊力を集中させて、あの大樹を切り裂けば、乗っ取られたアフレクションネクロマンサーを掴み取る事が……
(死にたいのですか?自分の身に何が起きているのか分からないまま、戦う事が、どれだけ危険な事か分からないのですか?)
「…………」
自分の足元に、一騎の麗騎兵がいつの間にかいる。
淡い光を携えた麗騎兵だが、それは新型の麗騎兵。
ケンタウロスのように、下半身を馬にした移動に特化した麗騎兵。
リディ達がいる戦場から、愛弟子であるアフレクションネクロマンサーが心配になって、ここまで駆け抜けて来たのだろう。
「…………分かりました」
自分の見立てでは、あそこにいる乗っ取られたアフレクションネクロマンサーを捕らえる事が出来る……しかし、アニーさんの見立てでは届かないという。
(判断を誤りそうになりましたが……自制心を持って、暴走しなかったのは素晴らしい事です)
「…………」
アニーさんの言葉……それは少し違う。
自分が、アニーさんの言葉を聞くのは信頼しているから、もしも、アニーさんの見立てでも、乗っ取られたアフレクションネクロマンサーを捕らえられると思ったのなら指示を出す。
どうやって乗っ取られたアフレクションネクロマンサーを捕らえられるかを……愛弟子を助ける事が出来るかと。




