異世界のアフレクションネクロマンサー677
「……そんなに憧れているのか?」
赤い森の中に現れた、赤いドラゴン。
獅子のようなふっくらとした体に、コウモリのような翼、それに鹿のような角。
その姿は間違い無くドラゴンではあるが、赤くテカテカしている質感は、間違い無く赤いモノ。
赤い世界で創られたドラゴン。
『ヒュゥゥゥゥ……』
「誘っている?罠?」
わざわざ、体に風の通り抜けの穴を作って鳴いている。
一瞬、あの赤いドラゴンの中に乗っ取られたアフレクションネクロマンサーがいて、決闘を申し込まれているのかとも思ったが、わぞとらしい目に付く飛び方に、こちらを呼ぶ鳴き声……あまりにもわざとらしい。
「……やってみるか」
あまりにもわざとらしい動きではあるが、あちらからも釣り針を垂らして来るというのなら、餌だけを掠め取るのも良いのかもしれない。
翼に力を込めて、指先の爪に神経を集中させて……
「はっ!!!!」
『ブシャアァ!!!!!!!!』
込めた力を解放させ、目にも止まらない速さで赤いドラゴンへと突っ込み、すれ違い様に爪で首を切り落とすと、
『ブシュゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!!』
首を落とされた赤いドラゴンは、何らかの反撃をする事も無く、下へと落ちていく。
「……なるほどな」
手応えも、歯応えも無い赤いドラゴン……これではドラゴンの相手にならないが、手に付いた赤い液体は少々面倒なモノであった。
マナを蓄えている鱗のお陰で影響はないが、赤いモノが体の中に入り込もうとしている。
体を溶かそうとするヌメヌメとした感触は、薄い塩酸を触ってしまったかのようで、腕のマナを少し開放して力を高めると、ヌメヌメした感触は蒸発して不快感が消える。
「こんなモノに、体の中に入られたら堪らないな……」
乗っ取られた、アフレクションネクロマンサーが自身どうなっているのかと思うと身の毛がよだつ。
「体を溶かそうとする」と言ってはいるが、それは文字通りに皮膚を溶かそうとしているのではない……内部的な、精神的な部分を溶かそうとしている。




