異世界のアフレクションネクロマンサー675
掟破りの、全ての大樹を焼くという手段。
いくらクジ運が悪いからと言って、全部をぶち抜けば当たる。
一つ一つ潰せば時間が掛かるが、全部を一気にぶち抜けば、そんなのは関係無い……それで怒られた事もあったが……今は関係無い。
全部燃やしてしまえば、どこに隠れていようが意味を成さない。
「アフレクションネクロマンサーの体が無くなったら困るだろ?煮上がる前に出て来な」
どれだけ地上から赤いモノを吸い上げたとしても、中身は熱せられる。
同じ事を言う事になるが、アフレクションネクロマンサーの肉体は、人間のそれ。
赤いモノがグツグツに煮えたぎれば、いつまでも大樹の中にいる訳にはいかない。
(羽を広げるまでの僅かな時間と、体が煮えたダメージ……それを考えれば、有利になるのはこっち)
体が煮えるのを我慢出来なくなって、飛び出した所を一撃で捕える……リディからのお願いで、アフレクションネクロマンサーを生け捕りにして欲しいと言われていたが、これなら何とかなる。
四分の一の当たりクジを当てるのではない、飛び出した当たりクジを捕まえるだけ。
翼に力を込める……油断はしない……これが最後のチャンスかもしれない……ドラゴンという種としてのアドバンテージに胡坐を掻かない……羽には力を込めるが、体は脱力させて……逃げる暇を与えず……
『ズリュズリュズリュズリュズリュズリュズリュルルルルゥゥゥゥ!!!!!!!!!!』
「嘘だろ!!!?」
乗っ取られたアフレクションネクロマンサーの事を、手詰まりにしたと思ってはいなかった。
手詰まりにしたと思っていなかったからこそ油断をせずに、いつでも身動きが出来るようにしながら、待ち構えていた……しかし、自分の思った通りにはならない。
四本の大樹は確かに燃やして、居場所を奪ったのだが、燃えている四本の大樹を中心にして、いくつもの大樹が生えてきて、
『ブチュブチュブチュブチュブチュブチュブチュブチュ!!!!!!!!!!!!』
「それはヤバいって!!!!」
燃えている大樹と、新しく生えて来た大樹がクモの巣のように、枝が入り乱れて連結されてしまう。
枝の大きさ人一人通るのに問題の無い太さで……それが意味するのは、
「くそっ!!!!」
『ボッッゴォオオォオオォォオォオォオオォオォ!!!!!!!!!!』
「うひぃひひぃぃひぃひぃひひひぃっぃぃぃ!!!!!!!!!!」
乗っ取られたアフレクションネクロマンサーは、笑い声を響かせながら、枝の中を通って他の大樹に逃げてしまう。




