異世界のアフレクションネクロマンサー674
いくら身を隠したと言っても、あんなに大きい……ドラゴンの翼のように大きな蝶の羽では、無視しようとしても嫌でも目に付くのに、どこにもいない。
それに、あれだけ命がグチャグチャに入り込んでいると、霊能者じゃなくても違和感として、乗っ取られたアフレクションネクロマンサーの存在を感じ取れるのに、その気配すら感じられない。
頭を少しだけ動かし、景色を舐めるようにして見て、
「……そこしかないか」
乗っ取られたアフレクションネクロマンサーが、四本の大樹のどれかの中に、潜んでいると目算を付ける。
簡単な逆算。
あの赤い蝶の羽は見る事が出来るが、実際は蝶の羽をではない、赤いモノが蝶の羽の形になっているだけで、姿形はいくらでも変えられのだから、大きさだって自由自在。
それに、あれだけの気配を放つ状態でどこかに隠れるというのなら、空に浮かんでいる怨念の塊である赤い雲の中だが、そこまで飛ぶ時間は無かった。
となれば、乗っ取られたアフレクションネクロマンサーが隠れるのに最適なのは、目の前にある四本の大樹だけ。
「これはまいった……」
四本の大樹の中があるが、隠れているのは一本だけ……当たりの確率は四分の一の25パーセント。
昔からクジ運の悪さには定評があり、お楽しみ会でのクジ引きでは残念賞、貧乏くじの時は特賞を引く……
「当たる気がしないな……」
こんな状況でも、自分の運の悪さに笑ってしまう。
当たりが移動するはずも無いのに、右から順番に選べば当たりが一番左で、飛ばし飛ばしで選べば、当たりを飛び越し……普段、自分なら選ばないと所を選べば外れで、選ぶ所を選べば外れる……そんなクジ運の無さで、この四択問題を選ぶというのは自殺行為だが、
「けど……これはクジ引きじゃない……」
ドラゴンは、ニタリと笑ってから大きく息を吸って胸を膨らませて、
『ボッッゴォオオォオオォォオォオォオオォオォ!!!!!!!!!!』
炎を一気に吐き出すと、四本全ての大樹に炎を浴びせると、
「これなら選ぶも何も無いだろ?」
四本の大樹が炎に包まれる。




