異世界のアフレクションネクロマンサー672
最初に羽ばたく事によって、赤い剣を生み出すのには動作が必要というイメージを植え付け、二回目は身動き一つしない事で、上から迫る赤い剣を気取らせないようにしていた。
空からの赤い剣に押し込まれて、地上から伸びて来る赤い剣が迫る。
このまま何もしなければ、赤い剣に上下から串刺しにされてしまうが、
「見せてやろう……」
仕留められると、ニタニタと笑っていたのが仇となる。
ニタニタと笑っていたお陰で悪意を感じ、何かをしているのに勘付くことが出来たから、串刺しにされるまでに僅かな時間を作る事が出来た。
赤い剣によって、上下に串刺しにされるまで僅かな時間しか無いが、その僅かな時間があれば、体内に溜め込んでいたマナを、一気に心臓に流し込む事が出来る。
心臓が熱く鼓動して、体中が滾る。
息を吐くだけで、口の周りが熱気で歪む。
体中の芯から炎が燃え上がって……
「うぉぉおぉおぉぉおぉおおぉおおおぉぉぉ!!!!!!!!!!!!!!」
手を握り締めて翼を大きく広げると、迫って来る赤い剣を全て燃やし尽くす。
それは何も特殊な事をした訳ではない、それこそリザードマンですら出来る、マナを心臓に反応させる行為……しかし、桁が違う。
リザードマンでは炎を吐く程度であるが、ドラゴンの肉体は、炎を吐く程度では済まない。
黄金の体が、炎に包まれて夕焼けのように美しく輝き、
「………………」
乗っ取られたアフレクションネクロマンサーの顔から、笑顔が消える。
「そうだろ……おもしろくないだろ?リザードマンにとって最後の奥義である、炎の中で戦う方法が、ドラゴンにとっては、当たり前の方法なのだからな」
リザードマン達が炎を吐き、鱗にマナを溜めて炎に耐えて、身を焼きながら燃え盛る炎の中で戦う方法を、ドラゴンは涼しい顔で……
「ちなみに言っとくが、これは周囲に炎があるんじゃない……炎を纏っているんだ」
『ゴッォオォォオオッォォォォォ!!!!!!!!』
「…………!?」
周囲の炎が燃え盛り、ドラゴンを中心にして渦巻く。




