異世界のアフレクションネクロマンサー670
「「グゥゥゥゥ…………」」
まるで、十字架に磔にされた罪人のように、空高々に掲げられた者達を見て、ドラゴンになれなかった者達が、怯えて喉を鳴らす。
気持ちは分かる、自分も感じている……目の前にいるアフレクションネクロマンサーに、不気味なモノを感じている自分がいる。
マナとは違ったモノ……空から見ていた時は、感じなかった蠢く異様な、胎動する力を今は感じて……
「キサマ……いや……キサマ等か……」
そこで気付いた、アフレクションネクロマンサーの中に、沢山の存在が混ざり込んでいる事と、
「アフレクションネクロマンサーの体は余程、居心地が良いらしいな」
アフレクションネクロマンサーの核となるような、存在を感じられない事に気付く。
目の前にいるのは、エルフやオークの英雄であるアフレクションネクロマンサーではない、アフレクションネクロマンサーの皮を被った存在。
アフレクションネクロマンサーは、ここの者達を守る為に、赤いモノを取り入れ過ぎて、自分を失ってしまったのだろうが、
「……降ろしてやれ……お前達が串刺しにしているのは、お前達と同じ、捨て石にされた者だぞ」
それならそれで、話をする。
串刺しにされている者達の中で、誰かに犠牲になる事を強いた者はいない……上の者から犠牲になれと強いられた者達しかいないのだ。
それは、アフレクションネクロマンサーの体を乗っ取っている者達と同じ犠牲者、悪戯に
苦しめるのを止めるように説得を試みるが、
「ひひ……ひ…ひひひ……」
アフレクションネクロマンサーの皮を被った存在は、串刺しにした者達を見て、ご満悦に笑う。
「これは妖怪なのか……」
話には聞かされていた、妖怪という存在。
力を手にした事で、自分の受けた苦しみを周りに撒き散らす存在。
妖怪の種類は多種多様にあると教えられているが、目の前にいるのは、無差別に相手を襲うタイプ……かなり厄介な妖怪。
「もう一度言うぞ……お前達が串刺しにしているのは、お前達と同じ犠牲者だ……襲うなら襲うべき者達がいるだろ」
最後にもう一度だけ警告をするが、
「ひゃゃぁぁはっはっはっはぁはあははあぁああぁあぁ!!!!!!」
アフレクションネクロマンサーを乗っ取った者達は、悲鳴のような甲高い笑い声を上げながら、羽ばたくと、
「まずい!!!?」
「ギャオォォォォオオォォォォオオオオォォオオォォ!!!!!!!!」
「ギャアァアアァアァァアアァァァァアアアアァァァ!!!!!!!!」
自分がいる所にまで、赤い剣が地上から突き出す。




