異世界のアフレクションネクロマンサー666
「ほらっ、早く行きなさい……アルフア様、リーフを頼みましたよ」
「おじい様!!」
ビレーは、リーフの背中を押してアルフアの側に押してから、重そうにハンマーを肩に担ぐ。
「そんな泣きそうな顔をするんじゃない……我々の務めを果たすだけだ」
種族の違いというだけで……エルフに生まれたか、オークに生まれたかで運命が変わる。
「おじい様!!」
「……リーフさん行きますよ!!」
エルフであるアルフアとリーフ、オークであるビレーの間には、目には見えない明確な生死の境目がある。
(これで良い……)
アルフアが、リーフを生死の境目から、生の方へと連れて行ってくれる……間違ってもこっちへと来てはいけない。
「聞け!!勇ましき者達よ!!我々の役目は何だ!!命を掛けて戦い!!命を掛けて敵を討ち!!命を掛けて仲間を守る事のはず!!」
鎧を着て出遅れていたオーク達に檄を飛ばす……死ぬ事を恐れるなと……
「何を恐れる事があろうか!!我々が、この瞬間まで生き残れて来たのは誰のお陰だ!!それは先に命を捧げてくれた者達がいるからであろう!!」
言葉を選んでいく……あの巨大な化け物と戦えるように、みんなの気持ちを昂らせる言葉を……
「戦え!!!!仲間の死によって生き延びた我々は、仲間の為に命を散らさなければならない!!!!!!」
「「「おおぉぉぉぉぉおおおおぉぉおぉおぉぉ!!!!!!!!!!」」」
ビレーの檄に、多くのオーク達が雄叫びを上げて呼応する。
ビレーの言葉が死に誘うものなのに、奮い立たせた勇気が死へと向かうというのに、オーク達は誰一人として、咆哮を上げるのに戸惑いを見せない。
「おじい様!!おじい様!!おじい様!!!!!!」
「リーフさん!!!!そっちに行ってはいけない!!みんな彼女を連れて行くのを手伝ってくれ!!!!」
翼を広げようにも、赤いモノに阻害されて広げる事が出来ない。
空を浮かぶ化け物の時は、赤いモノで満たされた世界でも大丈夫だったのに……このままでは、みんなが……おじい様が……死んでしまう。
リーフは、涙が浮かぶ目で何とかしなければと、何かにすがろうと……何かにすがれないかと、視線を動かして、
「礼人…礼人ぉぉおぉぉぉぉぉおぉぉ!!!!!!」
リーフの目に映った、自分達を救ってくれる伝説の英雄の名前を呼んでいた。
ほんの少しの、短い時間の付き合いだけしか無くても、それでも礼人は……
『キュゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥンンンン…………ゴォォォォオォオオォォォオォォォ!!!!!!!!!!』
『ギャオォォォォオオォォォォオオオオォォオオォォォ!!!!!!!!!!!!!!』
天にも響く叫び声で礼人の名前を呼ぶと、天から光の柱が滝のように降り注いで、巨大な化け物を溶かした。
突然、降り注いだ眩い光に、その場にいた全員が身をすくめ、何が振ったのかと空を見上げると、
「あ…あれは……なんだ?」
「あれも…化け物なのか?」
空から降った光の後から、翼を持った大きなリザードマンが降りてくる。
そのフォルムは、地上にいるトカゲのような巨大な化け物と違い、洗礼された美しさがり、見惚れてしまう。
地上にいる醜い化け物と違って、神々しさを感じる存在に、その場にいる者達は、神秘を感じて息を飲んだが、
「ドラ…ゴン……」
あの日、夢で見た……礼人が教えてくれた、ドラゴンだと気付いたリーフは緊張で息を飲んだ。




