異世界のアフレクションネクロマンサー663
「そんな事は出来ない、仲間を見捨てる事は出来ない」……それを言えたらどれだけ楽であろうか……
「何か手立てがあるのですか?でしたら、総指揮官にお伝えしますが」
伝令の者は、命令を復唱しないフレンの考えを聞いてくる。
それは決して責めているのではない、職務として、何か方法があるのなら伝えると言っているだけ。
「その…あの……」
銃弾に晒される仲間を見捨てる訳にはいかない……けれど、何とか出来ると嘘を付く訳にもいかない。
これは戦争なのだ、犠牲者が出るというのは大前提……ここで前線のオークを助けるために機銃車の射撃を止めさせれば、巨大な化け物は全てを襲う。
そんな事になれば、被害は前線のオークだけでは済まない。
将軍として判断をしなければならない……オーク達を囮にして、みんなを下がらせる判断を……
「分かりました、後方のエルフを下がらせます」
「アルフア……」
「それでは撤退の命令を出して、お二人共も後方へ……」
「ただ、後から下がる者達を指揮しないといけないので、将軍であるフレンは先に、私は部下達と共に下がります」
「すぐに撤退しろという意味が、分かっていないのですか?」
それはアルフアの苦肉の策。
総指揮官のすぐに撤退しろという命令……その命令の中身を要約すれば、オーク達を犠牲にはするが、君達だけでも生かすという親心……援護をするから、なりふり構わずに逃げて来いと言っている。
それなのにアルフアは、前に出て指揮を執るという……それは総指揮官の判断に対して、反抗しているに近い。
伝令は、眉をひそめてアルフアと顔を見合わせて、無言で、本気で言っているのかと圧を掛けるが、
「……分かりました。早急に指揮を執って、後方のエルフ達を引き下がらせて下さい。フレン様は、ここにいる、連れて行けるだけの者達を連れて来てください」
「ありがとうございます……」
アルフアが目線を逸らさずにいる事に、覚悟を決めているのを感じてくれたのか、残るという判断に付いて、命令を無視したとして捉えるのではなく、必要な行為だと認めて引き下がってくれる。
「すまないが、頼んだぞ……」
「こっちは任せておけ。お前は、何とか時間稼ぎをしてくれ」
二人は顔を横に合わせた一瞬で、小さな声で段取りをすると、
「撤退の発光弾を撃て!!私は、これより後方のエルフ隊の撤退の指揮を執りに行く!!」
アルフアは側にいる兵士に指示を出して、見張り櫓から降りるのであった。
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『ヒュッゥゥゥゥゥ……ポンッ!!ポンッ!!ポンッ!!』
「そんな……」
後方のエルフの部隊を率いるリーフの目に映ったのは、空に打ち上がった撤退の合図。
巨大な化け物とリザードマンが襲って来ている状況で撤退しろというのは、前線にいるオーク達を見殺しにしろという意味。
「リーフ様!!」
「まだ撤退はしません!!ファイヤーボールを撃ち続けて!!」
「了解です!!」
後方のリーフ達は、何もずっと指をくわえていた訳では無い。
巨大な化け物が現れた時点で、前線の援護の為にファイヤーボールを撃っていた。
もちろん、リーフ達のファイヤーボールは角度を付けて、巨大な化け物だけを狙い、仲間を焼かないようにと配慮したものであるのだが、
『パァッァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!』
巨体な化け物には効果を感じられずにいる。




