異世界のアフレクションネクロマンサー656
肉体に魂を宿らせるのは簡単な事……そんなの、霊能者である礼人なら百も承知。
しかし、それを利用して生物兵器を用意するというのは想定外で……命を吹き込むというのは人の欲望、かの有名なフランケンシュタインの怪物の物語は、命を弄ぶ事への訓告として読まされた身としては、禁忌中の禁忌……想定外なのではない、想像する事を拒否する行為。
「この世界は……狂ってる……」
考えたい事は山程あるが、一つずつ頭を整理していく。
リザードマン達は、白亜紀最強の生物を生み出して……
「違う…こいつは……T-REXじゃない」
よくよく見ると、自分の知る白亜紀最強の生物T-REXと差異がある。
象のように太く分厚い体、その体を支えながら大地を踏みしめる足、ワニの頭を膨らませたかのような大きな顔……それは、どこからどう見ようともT-REXであるのだが、
「その翼は…なんだ……」
T-REXのような小さな前脚ではなく、鳥のような……まるで鷲のふくよかな翼を畳んでいる。
一体何を素体にして……
「怨念…そんな…そんな事を……」
空に次々と打ち上げられた怨念達、その量を考えれば自ずと答えが出る。
目の前のT-REXに酷似する化け物を創るのに、多くのリザードマン達の肉体を使っている……その方法は何だと聞かれたら答える事は出来ないが、打ち上げられていた怨念の存在感の強さ、新鮮さというのも変だが、怨念の質は年月を重ねた物では無かった。
多くのリザードマンを殺して、新たな肉体を創り出し、殺した者達の怨念を注ぎ込む……まさしく鬼畜の行為であるが、これ程の簡単に、強力な生物兵器を創る方法は無いだろう。
「不味い…不味過ぎる……」
頭の中で一つ整理を付けると、次に考える事が思い浮かぶ。
話を聞く限りではリザードマンとオークでは、腕力だけがオークの勝る部分と言っていた……っという事は、目の前にいる化け物に、オークが勝っている部分は何一つ無く、
『『『『『『パァッァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!!!!』』』』』』
あちらこちらで上がる、化け物の雄叫びにオーク達は茫然自失となって突っ立っている。




