異世界のアフレクションネクロマンサー650
何の躊躇も無く引き下がって行く、後方で備えていた者達。
元から犠牲になる事を想定しているからこそ、助けるための援護も無ければ、指示を出す事すらしない。
凶暴化したリザードマンは、自分達が見捨てられている事すら知らずに突っ込んで来る。
「最低だな……」
礼人は、この光景に反吐を吐いてしまう。
凶暴化したリザードマン達は、仲間を助ける為に命を捧げようとしているのではない、逃れられない苦しみに耐え切れずに、死に物狂いになっているだけ。
苦しむ者達を攻めるにも逃げるにも利用して、自分達はおめおめと逃げる姿はあまりにも情けない。
「殺してやる…………」
唇が震えて目が涙で濡れる……絶対に許せない……絶対に復讐してやる……心の底で憎しみが渦巻く。
礼人の背中から蝶の羽が伸びるのだが、礼人の感情に反応したかのか、蝶の羽が腐った血のようにドス黒い色をしている。
残された理性で銃弾の雨が止むのを待ちながら、逃げ出していくリザードマン達に狙いを定め……
『ゴォン!!ゴォン!!ゴォン!!ゴォン!!ゴォン!!ゴォン!!ゴォン!!ゴォン!!』
「突撃ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!」
後方からの射撃を止める合図が鳴り、ベルガが大声で突撃の合図を叫んだのを合図に、
『ヒュッン!!!!』
礼人はドス黒い羽を羽ばたかせて飛翔する。
「「「「「うぉぉぉおぉぉおぉぉぉぉおぉぉぉ!!!!!!!!」」」」」
一人突出して飛び出した礼人を見て、オーク隊は雄叫びを上げながら突進を始める。
今のオーク達の士気は最高潮。
いつもは自分達の命で、血みどろの攻守を決める争いから始まる。
前線に立った者達同士でぶつかり合い、互いに命を消費して、残った者達の数が多い方が攻めて、残った者の数が少ない方が守りを固める戦い。
まるで能の無いゲームのような攻守の決め方。
血と死で、最初の勝負の行方を占う戦いは、まるで花占いをするかのようにあっけなく、そのあっけない占いで、多くの者達の亡骸が千切られた花びらのように地面に散る。




