夢の中12
アニーと二月の言葉に大人達、全員が神妙な面持ちになり。
このただならぬ雰囲気に飲まれた礼人の顔は、知らぬ間に蒼白になって血色を失ってしまっていた。
「じいちゃん…アニーさん……」
礼人の霊力など良くて低級霊と対峙出来るかどうか、普段は皆が退治した場所の穢れを処理して霊力を高めているのに、とてもじゃないが鬼とドラゴンに匹敵する存在の所に行くなど足手まといにしかならない。
いっそ自分の身を危険に晒してでも、ここに残った方が良いのではないのかと思うが、
「礼人、あなたがここに残るのは無しです。臆病風に吹かれたとは言いません」
「そうじゃ、ここでお主を残せばアレは不測の動きをするかもしれん……それに大切なものを遠くに置いといては気が散るからのう」
それでも付いて来た方が良いというのが二月とアニーの考えであるらしい。
「そうです。それにここで死なれるくらいなら前で囮になって死んで下さいね?」
「おいっ!!アニー!!」
「ふふっ…皆さんも皆さんです。確かにこれから対峙するのはドラゴンや鬼に匹敵しますが、そんな神話に出てくるような相手ではないですよ?」
アニーは不敵な笑みを浮かべたまま楽しそうに話を続ける。
「もちろん、その辺の道端にいるようなトカゲに毛が生えたような存在ではないですし、絵本に出てくる動物に退治されるような可愛らしい鬼ではありません……それでもちょっとした恐竜やゲームに出てくるような鬼くらいの実力はあるでしょう」
「ん…んん……」
「う~ん?」
アニーの例えは分かるような気はするが……
「要は戦々恐々と恐れることは無い、気を引き締めれば何とかなるという事じゃな」
「はい……」
「……分かりました。隊列の組み方を考えるぞ!!」
何処か誤魔化されたような気もするが、これ以上悩んでいる暇が無いのも事実。
歴戦の二人がいるのだから、気を引き締めれば何とかなると信じるしかない。




