異世界のアフレクションネクロマンサー644
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フレンは椅子に寝そべって息を吐くと、
「嫌な気分だ……」
自分の胸の中にあるわだかまりを、正直に吐露してしまう。
自分達は兵士である以上、本国から命令を受ければ「はい」としか言えない立場。
本当は、心の中で少し疑問が沸いていたのだが、状況を変えられない自分達が、その疑問を知った事でどうにも出来ないし、余計な不安を産むだけになる。
それなら、いっそ黙ってしまった方が……
「フレン入るぞ」
「ベルガ……」
不安を自分の胸の内にだけにしまって、一人で頭を悩ませていれば、みんなが困る事は無いと思ったのだが、
「水臭いな。それともお前も、あの子のように水の方が良かったか?」
ベルガが、ずいっと差し出した手には果実酒があった。
「いや、こっちを貰うよ……いつもより甘いな」
「お前は頭を使うからな、特別だ」
受け取った果実酒は甘味が強く、酒はあくまでも、喉越しを良くする程度に注がれているだけ。
果実酒とは名ばかりで、果実の濃厚な甘みはフレンの疲れを癒してくれる。
アルフアとも仲は良いが、それでも、フレンの事を良く分かっているのはベルガ。
年がら年中、頭を抱えているフレンを支えて来た女房はベルガ。
「さて、酒が入って口も滑りやすくなっただろ。何が気になるんだ?」
ベルガは相対するように反対側に座ると、持って来た自分の分の果実酒に口を付ける。
「……お前には隠し事は出来ないな」
「当たり前さ。なんなら、お前が履いてるパンツの色だって当てるぞ?」
「本当か?俺は下着にも気を使うタイプだぞ?」
「そうか、俺はてっきり白かと思ってたぞ?」
ベルガの茶化しに、フレンは笑う。
思い詰めていた気持ちが晴れて、胸のわだかまりが溶ける。
「ふっ……少し気になっているのは、リザードマンの侵攻して来ている理由だよ」
「侵攻して来ている理由?それはあの拠点が欲しいからじゃダメなのか?」
「あぁ、ダメだ。あそこの拠点を取る事の利点というのは、本国に対しての攻撃拠点になるように思えるかもしれないが、周りの拠点は落とされていない。リミィ様の軍が孤立して戦えてたのは、この穢れた大地で戦える鉄騎兵、鉄騎兵のお陰で物資をほとんど必要としない……地の利、環境と全てが揃っていたからこそ、あの拠点は孤立せずに、単独で脅威となっていたんだ」
「なるほどな……」
頭を使う事を一手に、任されて来たフレンだからこそ、今回のリザードマンの侵攻が解せない。




