異世界のアフレクションネクロマンサー639
「ごめんなさい、フレンさん……」
気苦労で頭を悩ませるフレンを慰める事無く部屋を出て行くに罪悪感を覚えてか、礼人は扉越しに謝罪をしてから歩き出す。
あの重苦しい部屋を抜け出したくて、リーフも連れずに一人っきりになりたいというのは、結構なわがままで、一時とはいえ一人だけ重責から逃れるのは無責任でもあったが、
「ここか……」
礼人には、どうしても知りたい事があった。
礼人は目の前にある何の変哲の無い扉の前に立って、
『コンコン……』
遠慮がちに、静かにドアを叩くと、
「もう、準備が終わったのか……?アフレクションネクロマンサー様……?」
扉の先から出て来たのは、機銃車の指揮官であった。
ここは指揮官達の為に用意された個室。
拠点とはいえ、上官用のプライベートを確保する部屋が用意されており、出発するまでの休憩室として使って貰っていた。
「ごめんなさい、いきなり来てしまって」
「いえ…どうしてここへ、いらっしゃったのですか?」
アフレクションネクロマンサーの突然の訪問に、指揮官は驚いたのか体を強張らせたが、すぐに姿勢を正し、
「……機銃車についてですか?それでしたら申し訳ございませんが、詳細を説明をする事は出来ません。本国の者ですらこれを知っている者は……」
「いえ違うのです」
「違う……?では、どのような御用件で?」
機銃車に付いて聞かれるのかと思った指揮官は、回りくどい事を言わずに、話す事が出来ないと告げてお帰り願おうとしたが、要件が違うという事。
指揮官は、アフレクションネクロマンサーの突然の訪問に警戒をして扉を半開きにし、一言「お帰り下さい」と言って、扉を閉めれば全てを遮れるようにしていたのだが、
「貴方の身に付けている、そのネックレスに興味があって……」
「えっ……」
アフレクションネクロマンサーから指摘されたネックレスを服越しに握り締めて、今度こそ本当に固まってしまった。




