異世界のアフレクションネクロマンサー636
後ろ髪を引かれる事無く、用事が終わったとばかりに、さっさとこの場を後にしてしまった使いの者。
「えぇ…初めまして、私は……」
フレンは、残された機銃車の指揮官を前にして困ってしまう。
彼等は、総統の息が掛かっている兵士達、その身分は自分と比べるまでも無い。
指揮を執れと言っても、それを向こうが許すかどうかは話は別。
恐る恐る、自分の自己紹介から始めて、相手の出方を伺うが、
「よろしくお願い致します。我々はフレン様の指揮下に入る様に命令されています」
機銃車の指揮官達は、自分より下の身分の者に付く事に何かの不満を見せる事無く、敬礼をしてくれる。
「あっ…はいっ……よろしくお願い致します」
少しは不満な態度を見せられるだろうと、思って覚悟を決めていたのだが、一切の不満の無い態度に恐縮してしまう。
「フレン様、それに御息女のリーフ様、アフレクションネクロマンサー様に付きましては、本国にて機銃車の実演を見られたと聞いておりますが、間違い無いでしょうか?」
「はっ…はい」
「では機銃車の威力は御存じだと思いますが、なぜ、リザードマンを檻の中に閉じ込めていたのか分かりますか?」
「それは…機銃車の訓練をしていたからでは?」
その時の様子は間違い無く見ていた、檻の中に閉じ込まれていたリザードマンが、体を一瞬のうちに削り取られて絶命する姿を。
あの衝撃的な光景を脳裏に焼き付けられては、閉じ込めていた理由等、機銃車の訓練しか思い浮かば無かったが、
「機銃車の弱点は接近される事だからです」
「えっ……」
会話の横から入り込む形で、礼人が話に入り込み、
「リザードマンの身体能力でも、あの弾丸を全て掻い潜ることは出来ませんが、それでも、死を覚悟しながら突撃すれば、あの距離なら機銃車にいた人達を何人かを道連れに出来たでしょう」
「御名答です。 機銃車の弱点は接近戦をされたら、機銃車自体には反撃する能力が無い事にあります」
礼人の答えに、機銃車の指揮官は頷くのであった。




