異世界のアフレクションネクロマンサー633
鉄の軋む音が、連なって聞こえる。
鉄が連なって聞こえる音が、重なって聞こえる。
この独特な音が、何が来ているのかを想像させ、重なって聞こえる音が、ある物が大群を率いて、こっちに来ているのを想像させ、
「どうやら来たみたいというのは……あっ!?待つんだ!!」
大人しくしていた礼人は、フレンの制止に耳を貸さずに、音が聞こえて来る外へと飛び出すと、
「そんな……」
礼人の目に映ったのは、礼人が想像した通りの……
「いかがですかアフレクションネクロマンサー様?総統から聞いております……あれは「戦車」という物を模倣して改良した、キャタピラ式の機銃車となります」
車輪では無く、キャタピラで駆動する機銃車が、こちらへと向かって来ている。
正直な話、車輪式の機銃車を見た時、礼人の心の中では、まだ何とかなると思っていた。
というのも、舗装されていない土の上を車輪で走るというのは、とても手間な行為であり。
サスペンションの無い車輪では、デコボコな道なき道では車体に直接ダメージを与え、土の状態によっては車輪が足元を取られてしまい、まともに道を進む事が出来無い。
だから礼人の中では、機銃車が戦場に出てくるのは、ずっと先の話だと思っていたのに……
「でも…どうやってこれだけの数を……」
問題はそれだけではない、キャタピラで悪路を走破できるとはいえ、本国からここまで走って来たというのだろうか?
礼人に、あのキャタピラ式の機銃車の性能を計る目利きがある訳では無いが、こちらへと向かって来る機銃車の速度は、お世辞にも速いとは言えない。
人が歩く速度より速いが、走る速度よりは遅い位か?
「どうでしょうか?我々も、ここまでの道のりは大変でしたよ」
遣いの者が礼人の横に立って、こっちへと来る機銃車を見守るが、
(……そういう事か!?)
遣いの者は、余計な一言を言った。
素直に「ここまでの道のりは大変でしたよ」と言えば、礼人は、あの機銃車の性能を知らないからと、一人で納得したのに「どうでしょうか?」というのが、礼人の直感に触れた。




