異世界のアフレクションネクロマンサー631
もし、自分がここの拠点を受け持ち、撤退をするとい状況になったら一早くこの部屋を始末させ、ここにあるモノを持ち出すなり、破棄をさせる。
「……わざと置いていったのか?」
それらを一切行わずに、ここを使える状況にして、見本となるモノまで置いて去る……その心の内とは……
「使えという事か……」
この黒いモノは、リミィ達の生命線。
少ない兵士の数を賄う為、鉄騎兵を生み出す為に使われる素体。
向こうにとっては、何が何でも秘匿しないといけないはずだが……
「この黒いモノよりも、より優れたモノを創り出して必要が無くなった。もしくは密約で、これを最初から渡す手筈になっていたとか……降伏するため?」
思い付く事を考えて口にしてみるが、どれもピンとは来ない。
必要が無くなったから放置したというのは暴論、自分達が必要無いからと言って、相手に情報を渡すのは愚の骨頂。
密約で最初から渡す手筈がされていた?黒いモノを手にするというシチュエーションを作る事で、手柄を立てる?
それなら、わざわざこれだけの軍隊を動かす必要も無いし、それをするなら打ち合わせをするはず。
降伏という線は……降伏するというのなら、やり方が違う。
「そうなんです。私も考えてみたのですが、この黒いモノと赤いモノ、そしてそれを創り出せる場所をそのままにした意味……分かっているのは、これを使えという事だけです」
「何をさせたいんだ……」
これを残された意味を考える……考えるが答えが出ない。
いくら考えてもデメリットしか出ない。
「どうするフレン?本当にこれを渡すのか?」
「……この状況をニードゥス様に伝えて、判断を委ねよう」
この黒いモノに、どのような罠が仕掛けられているのかは分からないが、それでも、これをニードゥス様は必要としている。
「アフレクションネクロマンサー様、お手数ですが、これを管理して頂けないでしょうか?」
「分かりました。この部屋は一度、封印します」
「お願いします」
間違って誰かが憑りかれないように封印処理をし、ニードゥス様の判断を待つ事にしたのだが、
「フレン様!!」
「どうした?」
一人のエルフが、慌ただしく部屋の中に飛び込んで来るのであった。




