異世界のアフレクションネクロマンサー630
「罠か……確かに、これには不思議な魅力を感じてしまう」
黒いモノから感じた不思議な魅力。
最初は、おどろおどろしく感じて、何て気持ち悪いモノなんだろうと思ったが、それが自分でも気付かないうちに、魅力的なモノに感じていた。
触りたい、欲しい……なんで、そんな事を思ってしまったのか理解出来無くて……もしも、こんなモノがあちらこちらに置かれていたら、多くの者が引っ掛かっていたに違いない。
「でも、これが罠かどうかは、君の方が分かるのでは無いのかね?」
この黒いモノから、何かしらの力を感じるには感じるのだが、その実態を掴む事は出来ない。
これが、どんなに危険なモノで、どれだけの者達を惹きつけるかは……
「フレンさん、私が思っているのはこれが罠に使えるか、どうかではありません」
「なに?」
「この黒いモノを残して撤退した事に付いて、どう思うかを教えて欲しいのです」
礼人は、フレンの考えとは別の事を考えていたらしく、黒いモノが詰まった樽から、壁に備わっている赤いモノが詰まった袋の方へと行く。
「だって、そうでしょ?この拠点は鉄騎兵を最前線で作る基地にされていたんだと思います。ここを放棄するというのなら、この部屋に火を放って使えなくすると思うんです」
「そうだ…私ならそうする……」
火を着けるのすら出来ない程に急いで撤退した……というのは、ここの拠点の状態から察するにありえない。
リザードマンが襲って来て、ここが戦場になったというのなら、死骸があってしかるべき。
それならば、この黒いモノの魅力で我々が惑わされる、または、扱いきれないと放置したのか?と考えるのも難しい。
今までの話を聞けば、相手はアフレクションネクロマンサー様がいる事に気付いているはずであり、その力も十分に理解しているはず。
この黒いモノが罠として成り立たない可能性、この黒いモノを奪われてしまう事も、頭の中に浮かんでしかるべき。




