異世界のアフレクションネクロマンサー627
そして今も、礼人を守る為に、みんなが盾となっている。
そんな献身的に護ってくれる、みんなに報いる為に、礼人は気を張って、隠れているかもしれない敵の位置を早期に発見しようとする。
拠点の周囲の安全を確認し、拠点の中に入った途端に取り囲まれないという安全を確保してから、拠点の中に入り込む。
「暗いな…光を」
「はい」
拠点の中は、光源となる物が取り払われていて、外からの光が差し込むとはいえ、石造りの拠点は暗い。
エルフが創り出した光の珠が、少し前を飛んで、廊下を照らしてくれる。
静まり返った廊下を歩いて、拠点の中を調べて行くが、
「本当に、拠点を捨てたのでしょうか?」
「気を抜くな、油断させる為の罠かもしれない」
まるで引越ししたかのように、すっからかんな状態に肩透かしを食らいそうになり、ビレーによって気を引き締められる。
光源を頼りに、拠点内を探索していくのだが、特に問題となるような所は無く、順調に探索していくと、あの鉄騎兵の中身を創る部屋の近くまで来ていた。
「ビレーさん…例の場所ですね」
「うむ…何か異変を感じないのかい」
「怨霊は感じはしますが、何か変で……気の抜けた、お酒のような感じと言うんでしょうか……このまま放置しておけば、消えてしまいそうな感じなんです」
「……少なくとも、あの部屋には例のモノがあるというのは、間違いないのだな」
「それは間違い無いです」
「そうか……みんな、聞いてくれ。あの部屋には、鉄騎兵の中身となる液体を抽出する場所となっている。前に入った時には鉄騎兵の皮があるだけだった……だが、油断をしないで欲しい。アフレクションネクロマンサー様が、危険な物を感じないと言ってはいるが、実際に部屋に入ったら途端に、何かが襲って来るかもしれない……気を抜くなよ」
「「「はい」」」
ここまで、拠点を散歩するだけの状態であったが、今日一番のメインディッシュが来る。
ビレーと、もう一人のオークが門に足を預け、
「頼むぞ」
「はい」
ドアをゆっくりと開けて、小さな隙間を作り、そこへ光源を飛ばすと破裂させて、部屋の中を一気に光らせると、
『ドゴンッ!!!!』
勢い良く門を蹴り飛ばし、身を低くして、入り口から中の様子を窺う。
鉄騎兵がいないか、罠が仕掛けられていないか念入りにチェックし、問題が無い事を確認してから、
「アフレクションネクロマンサー様」
「はい」
外で待たせていた礼人を、部屋の中に招き入れる。




