異世界のアフレクションネクロマンサー624
(そうか…もう来たんだ……)
こんな中途半端な広さの所に天幕を広げるというのは、ここを拠点にするという事。
軍隊はもう配備されて、自分達が侵入するのを待っているはず。
「お待たせして申し訳ございませんでした。ただ、ゆっくりと休ませて貰ったので、その分だけの働きをしてみせます」
浅い眠りではあったが、それでも体力、気力は回復している。
拠点の中に侵入して、内部崩壊をさせるだけの余力は十分にある
礼人は両の手の拳を握り、これからの戦いに気を入れていこうとしたが、
「それなのですが、少し状況が変わりまして」
「状況が変わった?」
「アフレクションネクロマンサー様にも判断して貰いたいのですが……我々の軍隊はすでに、前に出ています。しかし、敵は一切の鉄騎兵を出さなければ、一体のオークもエルフも出て来ません」
「それは……私が拠点に忍び込むのを予想して、兵力を集中させているという事ですか?」
「いえ、そうではないんです。私も、霊力で感じてみようと思って前線に行ったのですが……そもそも、気配が無いという感じがして」
「気配が無い?」
アルフア達の説明によって、握った拳が開いてしまった。
「拠点に気配を感じない……それは、オークやエルフの気配もですか?」
「そうだ。一人二人ならともかく、何十人といる状態で、気配を完全に殺すというのは考え難い。それにリザードマンが先に占拠したとしても、それなら、争いになっているはず……我々の考えとしては、敵はあの拠点を放棄して逃げ出したと考えたいのだが……」
「だから、私が目覚めるのを待っていたのですね。あの出来損ないの化け物が急に現れたように、いきなり、拠点内に化け物が現れても大丈夫なように」
「そうなんだ」
不穏な空気を淀んだ説明に、礼人の戦う気が昂り、霊能者としての警戒を強める。




