異世界のアフレクションネクロマンサー620
凶暴化したリザードマンはそれ知ってなのか、知らずなのかは分からないが、鉄の塊に爪が立たないと、するや否や、腕や足に巻き付いて回転する。
ここで一つ補足しないといけないのが、凶暴化したリザードマンは最初は頭を狙わない。
凶暴化したリザードマンはあくまでも、飛び付いてから襲う事にこだわる癖がある。
それが何故かまでは分からないが、これに付いては、今の所ではあるが絶対の話。
「だから、組み付かれてから、すぐに助ければ何とかなる」
「…………」
「そんな、しょんぼりするものじゃないぞ。確かに彼等には、最初の接触をして貰う事になるが、それでも仲間が助ける……それに」
『バンッ!!』
「わっ!?」
「ワシが休んでいろと言っても、みんながピンチになったら、アフレクションネクロマンサー様が助けてくれるんだ……何も心配する事は無いな」
「それは……」
こっちの世界を事情を察しはしたものの、それで黙っているつもりは無かった。
もし彼等が、凶暴化したリザードマンに襲われるような事があれば、すぐにでも助けようと思っていたが、その事をビレーに見透かされていて、
「分かっておる。もしも彼等が襲われたら、助けてあげて欲しい……だけど、それまでは、ゆっくりと休みなさい。みんな君を信頼している。信頼されているからこそ。いつでも助けられるように万全な状態でいるんだ」
「……はい、分かりました」
その上でビレーは、礼人を無理矢理に拘束するのではなく、礼人が気を張り過ぎて、自滅しないようにと気遣いをしてくれる。
「さすがアフレクションネクロマンサー様……君はとても聡い子だ」
ビレーは、大きな手で優しく礼人の頭を撫でてから、鎧を着始めている者達の方へと戻り、
「みな、分かっていると思うが、アフレクションネクロマンサー様は、ここまで我々を守り続けて、誰一人と死なせなかった。鉄騎兵と、凶暴化したリザードマンが襲って来たにも関わらずにだ」
ビレーの言葉で、先程まで、ゆったりとしていた雰囲気が引き締まる。




